スマートウォッチの普及率が高まってきたのか、映画館の隣の人のスマートウォッチの光が気になる事が増えてきました。本人は気づいていないのでしょうが、映画館の暗闇だと、微かな光でも目に入ると、結構、気になります。
毎年恒例、東京都庭園美術館の建物公開展に行ってきた。
1933年に朝香宮邸として建てられた建物が、1983年に美術館として開館して今年で40周年。今回の建物公開は、朝香宮家の人々に焦点を当て、彼らがお住まいになっていた当時の邸宅空間を再現するとともに、写真や映像資料、工芸品、調度品、衣装などによって、当時の生活の一端を紹介するという趣向。
あくまでも建物公開なので、絵画の展示などは無いのだが、実際に住居として使われていた状態の復元だけで、十分に美術館として機能してしまうのが、この建物の凄いところ。通常の企画展では絵画展示などで隠れてしまう建物の細部が観られるのが、むしろ楽しいのだ。
普段は非公開の3階、ウインターガーデン(温室として使われていた)が特別に公開されているのも嬉しい。
壁面の工夫なども、見所だ。
食堂のマントルピースの上部の壁画も、いかにも食堂らしくて楽しい。
そして、天井の照明も凝っている。
この美術館の名物「三羽揃ペリカン」、今回も登場である。朝香宮夫妻が大正14年にヨーロッパから持ち帰った、ロイヤルコペンハーゲン製品。当時はまだペンギンが知られておらず、宮務官が間違えて、収納されていた木箱の側面に「丁抹國製陶器 三羽揃ペリカン」と書いてしまったらしい。美術館の収蔵品としての正式名称は「朝香宮家旧蔵《三羽揃ペリカン(ペンギン)》」となっている。
朝香宮家の人々に焦点を当てるという趣旨で、当時のスケッチブックや写真アルバムも展示されている。
また、朝香宮家の人々の婚礼で使われた着物も展示。
新館の方にも展示はたっぷり。
とくに力が入っていたのが、ボンボニエール。元々はヨーロッパで用いられていた小型の菓子入れが、明治以降の日本で、慶事の際の引き出物として使われるようになり、皇室独自の文化として発展したもの。300点以上が、一挙に公開である。
ということで、今年も、アール・デコ様式の建物を堪能。
さらに、このお屋敷の凄いところは、日本庭園も併設されているところだ。
本館だけでなく、庭園にある茶室も、国の重要文化財に指定されている。この邸宅と庭園を、美術館として活用しながら維持するというのは、素晴らしい判断だと思う。
気候も良く、気持ちの良い建物散策だった。
主演のPaul Mescalがアカデミー主演男優賞にノミネートされた映画を観てきた。監督・脚本は、これが長編デビューとなる Charlotte Wells。
主人公が、父親とトルコのリゾート地で過ごした20年前の夏休みを振り返る。当時、彼女は11歳。父親は31歳。自分が当時の父親の年齢に達して、改めてビデオなどを見返すのだ。
と言っても、現在のパートは、ごく僅か。それも、かなり曖昧な描かれ方で、映画の殆どは、親子で撮影したビデオ映像も交えた、20年前の夏休みの情景である。
その情景の描き方も、起承転結的な展開はなく、リゾート地での様々な断片映像の積み重ねだ。観ていて、初めは戸惑うのだが、昔の思い出って、こんな感じだよなぁという納得感がある。他人の夏休みの記憶なのに、何だか懐かしく思えてしまう。
父と母は離婚しており、日頃は母親と暮らしている娘と二人だけでバカンスを過ごしているのだが、二人の関係は良好。その親密さが、心地よい。父親はどこまでも優しく、娘も素直で本当に良い子だ。大人の世界に足を踏み入れかける11歳という年齢設定が絶妙。
しかし、幸せな思い出も、後になって振り返ると、なにか寂寥感を覚えるというのも事実。ただただ親密で幸福な情景の中に、通奏低音のように、悲しみのようなものが流れている気がする。
それは、現在の娘が、女性同士のカップルで子育てしている様子が、一瞬、映されるところで、さらに強く意識することになる。そこから深読みしていくと、当時の父親が密かに抱えていた重荷のようなものも感じ取れる。
エンターテインメント性は無いが、独特の引っ掛かりを残すタイプの映画。娘役の Frankie Corioが素晴らしく、それだけでも観る価値がある作品だろう。