IN/OUT (2022.3.27) |
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まん延防止等重点措置がようやく解除されました。この2年間、いつが緊急事態宣言で、いつがまん延防止で、いつが規制無しだったのか、すっかり訳が分からなくなりましたが、とにかく、一段落と言って良いのですかね。 最近のIN「ダミアン・ハースト 桜」@国立新美術館 (22.3.26)英国の現代美術家、Damien Hirstの最新作「桜」シリーズの展覧会を観に、国立新美術館に行ってきた。 縦に真っ二つに切断した牛をホルマリン漬けにした作品などセンセーショナルな作風から、Damien Hirstに対しては、話題作りに長けた現代美術家という印象を持っていた。しかし、今回、並んでいる24作の大型の絵画(「桜」のシリーズは全107点。そこからHirst自身が選んだそうだ)には、奇をてらった感じは無い。会場奥で上映されているインタビュー映像によれば、19世紀のポスト印象派や20世紀のアクション・ペインティングといった西洋絵画史の成果を独自に解釈した結果だという。 ということで、Damien Hirstの作品展としては、衝撃度は少ない。そもそもが、一般的日本人が思い浮かべる「桜」とは、ちょっと感性が違う気もする。 それでも、国立新美術館の天井高8mの展示室を目一杯使い、白い壁に、最大、縦5m×横7mを超える大型絵画が並ぶ空間に身を置くのは、単純に気持ち良い。 この春、天候やスギ花粉を気にせずに楽しめる、お薦めのお花見スポットと言えるだろう。 "Nightmare Alley" (22.3.26)Guillermo del Toro監督の新作を観てきた。邦題は、そのまま「ナイトメア・アリー」だが、原作小説と同じく「悪夢小路」という副題を付けた方が親切だった気もする。 舞台は、1940年代のアメリカ。Bradley Cooper演じる主人公は、怪しげなカーニバルに流れ着き、そこで読心術を身につけ、ショーマンとして成功していく。しかし、その成功の裏で徐々に人生を狂わせていくという物語。監督お得意の超自然的な設定はなく、人間の暗い欲望を浮き彫りにするダークなノワール映画だ。 超自然現象は封印しているとは言え、Guillermo del Toro監督の趣味全開のカーニバルの描写が見事。現代では人権団体に糾弾されて一発アウトになりそうな、獣人、蜘蛛女、小人に怪力男、ホルマリン漬けの胎児等々が禍々しい極彩色のテントに並ぶ。昭和初期の見世物小屋も彷彿とさせ、悪趣味が妖しい引力を放つというのは、洋の東西を問わないなと思う。 訳ありの男を説得力を持って演じたBradley Cooperも良いが、彼に大きな影響を及ぼす三人の女性を演じた Toni Collette、Rooney Mara、Cate Blanchettが、素晴らしい。それぞれのキャラクターが光っているが、中でも、心理学者を演じたCate Blanchettの毒々しい演技が凄い。ノワールには欠かせないファム・ファタールを見事に体現している。 因果応報という言葉がピッタリくる、救いの無い物語だが、最後まで惹きつける語り口は、さすが、Guillermo del Toroだと思う。 深夜まで飲むという習慣が無くなったのは、なんやかんや言って、良いレガシーだと思います。いつまで続くのかは定かじゃありませんが… |