IN/OUT (2021.9.26) |
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9月=会計年度の上半期が間もなく終了。色々、バタつく今日この頃です。 最近のIN「挾間美帆 m_unit Japan Tour 2021」@ブルーノート東京 (21.9.19)ジャズ作曲家、挾間美帆率いる“m_unit”の公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。 ちょうど、彼女が首席指揮者を務めるデンマークラジオ・ビッグバンドの新アルバムが発売されるタイミングだが、今回の公演は m_unitのJapan Tourということで、演奏されるのはm_unitとして発表している3枚のアルバムからの選曲が主となる。コロナ禍のため、彼女が拠点とするニューヨークのミュージシャンが参加できず、日本人のみの編成だが、ドラム、ベース、ピアノ、ヴィブラフォンに弦楽四重奏とホーン5人によるユニット。ヴァイオリンのマレー飛鳥(金子飛鳥から改名したそうだ)、ピアノの加藤真亜沙、ドラムスの伊吹文裕など、有名どころが揃った実力派集団だ。 演奏は、彼女の作品の他、Herbie Hancockの「Maiden Voyage(処女航海)」のアルバム曲をメドレーに仕立てた作品や、アンコールで披露されたJ. Williamsの「Olympic Fanfare and Theme」など。どれも、緻密かつ多層的な構成になっていて、とても刺激的だ(語彙力の不足がもどかしい)。ビッグ・バンドと言うと、いささか古くさい予定調和的な音を想像しがちだが、それとは全く違う「ラージ・ジャズ・アンサンブル」の奥深さに引き込まれる演奏だった。 指揮者の狭間美帆を含め全14人が並ぶステージは、通常よりも拡張されていて、客席の一部を潰している。ただでさえ間引きされている座席がさらに少なくなる訳で、今の状況下でのライヴ開催は本当に大変だ。今回のステージはライヴ配信もされていたが、特にこのような分厚い音のライヴは、現場の空気を共有して音に浸りきってこそだと、つくづく実感。 「Tribute to Chick Corea 小曽根真×上原ひろみ」@サントリーホール (21.9.23)ジャズ・ピアノ界の巨匠、Chick Corea。今年は生誕80周年を記念して、Chick Coria・小曽根真・上原ひろみの三人でアニバーサリー・ツアーを予定していたという。しかし、今年2月9日に急逝。小曽根真・上原ひろみの二人による追悼公演になってしまった。東京・名古屋・兵庫で行われる公演の内、サントリーホールに行ってきた。 クラシックを聴く機会が無く、サントリーホールの中に入るのはこれが初めてだ。評判通りの素晴らしい雰囲気。開演前の客席通路を、係の人が「『ブラボー』はご遠慮ください」と書かれたボードで注意喚起しながら歩いているのが、さすが、クラシックの殿堂。舞台上にはグランドピアノが2台、向かい合わせにセットされている。PAは無し。 モノトーンの衣装で揃えた二人が登場。向かって左に小曽根真、右に上原ひろみが座り、まずはChick Coreaの「Humpty Dumpty」。「今日は、会場にChick Coreaも来ているはず。2 persons & 1 spiritでお届けします」との小曽根真の挨拶に、会場から大きな拍手。 続いて、小曽根真の作品「O’berek」。手拍子有り、足踏み有りの外連味に溢れた曲を、息もピッタリに奏でる二人。流石だ。そして、上原ひろみの「Fortitude」。新アルバム「Silver Lining Suite」収録曲だが、弦楽四重奏とピアノによる作品を、ピアノ2台で見事に表現。そして、上原ひろみの夢に現れたChick Coreaが「マコトとの共演には、この曲を演れば」と提案したというGershwinの「3 Preludes」(あまりにリアルな夢だったので、すぐに小曽根真に電話しようとしたが、おかしな人だと思われたくないので、その日は思いとどまったひろみ嬢だが、後日、この話をして、小曽根真も快諾したそうだ)。 前半は、結局、Chick Coreaの曲は1曲だけで、15分間の休憩。 後半。赤と黒の衣装に着替えた二人。それぞれソロでChickの曲を演奏するという趣向。じゃんけんで勝った小曽根真が先攻で「Crystal Silence」。上原ひろみは「Children’s Song No.4」。そして二人で「Fantasy For Tow Pianos」。これで本編終了。 アンコールは、もちろんという感じの「Spain」。二人はピアノを入れ替わり(アンコールの拍手の間、係の人が鍵盤と椅子を消毒していた…)、向かって左に上原ひろみ。右に小曽根真で演奏。やはり良い曲だし、手練れの二人によるアレンジ&演奏の、楽しくも見事なこと! これで全編終了。 素晴らしい技巧の二人がChickに捧げた想いを、しっかり感じられる公演だった。もし、彼が存命で、この公演が予定通り三人で行われていたら、どれほど凄かっただろうと思うと、やはり残念だが…。 "The Courier" (21.9.25)Benedict Cumberbatch主演の映画を観てきた。邦題は「クーリエ 最高機密の運び屋」 1960年代、東西冷戦が最も緊張していた時期に起きた実際の出来事の映画化である。Benedict Cumberbatch演じる主人公は、東欧諸国相手にビジネスを行うセールスマン。彼は、MI6とCIAの共同オペレーションで、ソ連内部の情報提供者との連絡役に抜擢され、モスクワに派遣される。スパイ活動には全くの素人なので、むしろ目立たないだろうという思惑だ。 普通のセールスマンが、最初は渋々ながらスパイ活動に従事する内、その緊張感に押しつぶされそうになりながらも、ソ連側のスパイと人間的な交流を深め、また、核戦争の危機を回避するという使命感にも目覚めていく(キューバ危機で、米ソの全面核戦争が現実味を増していた時期なのだ)。 実話がベースなので、展開は地味だ。もちろん、スパイ活動を描くのだから緊張感はあるが、あくまでもリアリスティック。非現実的なハラハラドキドキとはならない。物語の後半、主人公は大変な危機に陥るのだが、そこに、007のような超人的スパイが助けに現れる、ということも無い。 結局の所、この映画の最大の見所は、Benedict Cumberbatchの役作りの凄さだ。ここまで行けば、役作りと言うより、肉体改造と言った方が良いほどの徹底ぶりには、ただただ感心する。そんな彼の演技に支えられた、良い塩梅の緊張感と人間ドラマ、そして、終盤のヒリヒリするような展開。とても良質なスパイ映画だと思う。 時間が経つのは早いと思うのと同時に、上期中に、相当、色々な事があったな、6ヶ月はそれなりに長いな、とも感じます。毎回、期や年や年度の終わりには感じることですが、今回は特に、かな。 |