IN/OUT (2021.5.9)

予想通り、緊急事態宣言は延長。


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「クララとお日さま」21.5.3

カズオ・イシグロの新刊を読了した。

このところ、読書(既に、紙の書籍を読むことは諦め、Kindle一本槍だ)は、週末に訪れる飲食店でお酒と共にというのが定番化し、読む量はかなり減っている。しかも、大半は古い翻訳探偵小説に偏っている。そんな保守化した読書傾向の中、カズオ・イシグロは、新刊が出れば無条件に読む数少ない作家の一人だ。

2017年にノーベル文学賞を受賞した後、最初の長篇となる本作は、2021年3月に世界同時発売されたばかりだ。翻訳や出版準備は、厳しい緘口令が敷かれた中で行われたそうだ(印象的な表紙の装丁も、詳しい内容が分からないまま描かれたらしい)。子供の遊び相手として製造された人工知能搭載ロボット=Artificial Friend のクララを主人公にした、近未来を舞台にした作品である。

今以上に突き進んだ格差社会を舞台に、人工知能は人の代替になり得るのか、あるいは、人工知能も宗教的な意識を持つのかなど、極めて現代的な考察が詰まった、重層的かつ密度の濃い物語だ。しかも、語り手がクララ自身ということで、読者の判断に委ねられる部分が非常に大きい。イシグロの特徴である「信頼できない語り手」が、この小説でも極めて有効に機能している。その一方で、子供が成長し、愛着があったはずのおもちゃから卒業するストーリーと単純化することも可能だ。盛り沢山の要素が詰まった物語だが、文章はとても平易というのも、イシグロらしい。この点は、土屋政雄の翻訳の力も大きいだろう。

ということで、カズオ・イシグロにハズレ無し。



米子駅 そんな中、やのとあがつまの米子公演に行ってしまいました。ホテルの人と必要最低限の会話以外、誰とも喋らず。会場以外の人混みには近づかず。ということは徹底したつもりですが、やはり後ろめたさは感じてしまいます。それでも、久しぶりに知らない町を歩くのは楽しかった。米子市公会堂