IN/OUT (2020.6.28)

気がつけば、2020年も折り返し点。なんだか、異様な半年間でした。


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「新喜劇之王」20.6.27

周星馳の新作を観てきた。彼は、最近はすっかり俳優業からは足を洗った感じで、今回も製作・監督・脚本を手掛けているが、出演はしていない。邦題は「新喜劇王」。因みに、彼が主演・監督・脚本を手がけた1999年の「喜劇之王」の主役を女性に置き換えて復活させた作品でもある。

主人公は、10年以上、エキストラから抜け出せない俳優志望の女性。「スタニスラフスキー・システム」の本を持ち歩き、何かというと演技論を振り回す、周囲からしたら面倒くさいタイプだ。まあ、主人公が一般的常識からはみ出した面倒くさい奴というのは、周星馳映画の定番である。ただし、彼女が面倒くさいのは演技に絡むところだけ。それ以外は、とても正直で真面目な努力家なのだ。そんな彼女が、色々とトラブルに巻き込まれたり、落ち目になったかつての大物俳優と出会ったりする様子が淡々と描かれる。果たして、彼女は俳優として大成できるのか、というお話。

主演は鄂靖文(E Jingwen)。この作品で注目されるようになった1989年生まれの遅咲き。主人公と同様の苦労をしてきたのかもしれない。素は中々の美人だが、女性を不細工に撮ることに異様な才気を見せる周星馳の演出に見事に応えている。

しかし、それ以外の面では周星馳の良さが影を潜めているように思う。展開と描写が本当に淡々としていて、かつての周星馳の作品の魅力だった、強引で下品だけど破壊力抜群の笑いが全く出てこないのだ。

周星馳は、まだ老け込むには早いと思うのだが(1962年生まれ)、この作品のつまらなさはどうしたことだろうと終盤まで思っていたのだが、ラストにやられた。それまでのつまらないシーンが伏線だったのだと分かる感動シーンにグッと来た。正直な所、こうした感動路線よりは、お下品バカ映画路線に戻って欲しいという気もするが、彼の映画に対する愛が詰まった悪くない作品だ。



いや、「でした」じゃなくて、まだまだ現在進行形か。