IN/OUT (2019.7.7)

この辺りでは、久しぶりに梅雨らしい梅雨、という感じです。しとしと降る雨が多く、気温はそれほど上がらず、けれども湿度のせいで不快指数は高い。日本中が、こういう梅雨なら良いのですが。


in最近のIN

"E.YAZAWA SPECIAL EVENT ONE NIGHT SHOW 2019"@幕張メッセ19.7.6

今年で70歳を迎える日本ロックン・ロール界のレジェンド、矢沢永吉を中心にしたフェスを観に、幕張メッセに行ってきた。

矢沢永吉と言えば、そのライヴ・パフォーマンスの評価は高く、一度は観たいと思っていたが、熱すぎる(そして、やんちゃ度の高い)ファン層がライヴ会場に押し寄せるイメージがあり、実際に行くのは腰が引けていた。しかし、今回はフェスということで、ゲスト・アーティストに、氣志團、KREVA、東京スカパラダイスオーケストラ(Guest:奥田民生)、MIYAVIがラインアップ。これなら、YAZAWAのスペシャルビーチタオルを持っていない私が紛れ込んでも、それほど浮かずに済むのではないかという思惑で参戦することに。

会場周囲には、いかにも年季の入った永ちゃんファンらしい、白のスーツにリーゼントというおじさんもいるが、若い子も多い。と思ったら、同じく幕張メッセの別ホールでは、日本テレビの「The Music Day」の9時間半に渡る生放送が行われ、さらに別のホールではEXILE系のイベントも開催されているらしい。それぞれ、特徴有るファンが入り交じったカオス状態だ。

15時、開場。国際展示場4~6の巨大な空間。R・O・C・K、四つのブロックに、合計2万席のパイプ椅子が並ぶ。私は、後方Cブロック。コンサートホールではなく展示場なので、床は平面。そのため、ステージは見づらく、演奏中は、もっぱらスクリーンを観ることが多くなる。「フェス」と銘打たれているだけに、会場の後方には、飲食の屋台が数店、出店している。

しかし、特に前説が有るわけでも無く、そもそも、フェスには必須のタイムテーブルの発表も無く、16時になると、割に、いきなりという感じで、最初のミュージシャン、氣志團登場。私も含め、多くの人から、色物バンドと思われていそうな彼らだが、ちゃんとライヴを観ると、なかなかどうして、気骨溢れるロックバンドだ。その現在の心情を歌ったと思われる「今日から俺たちは!!」には、グッと来てしまった。なお、途中、隣でやっている「The Music Day」の中継が入り、そこでは「ファンキー・モンキー・ベイビー」を演奏。8割以上が永ちゃんファンだと思われる会場も、かなり盛り上がっていた。

演奏が終わるとセットチェンジなのだが、ここでも、特にアナウンスが入らない。なんとも、ほったらかしの進行だ。そして、20分ほどの間を空けて、MIYAVIのパフォーマンス(途中で1曲、KREVAがゲスト参加)。女子の嬌声が凄い。確かに、ルックスも、ステージ上の動作も、カッコ良いギタリストだと思う。その奏法も、しっかり個性が確立されている。ただ、私には、ヴォーカルが安定していないように聞こえ、ギターに専念すれば良いのに、と思ってしまった。彼目当ての女性ファンは一定数いたようだが、永ちゃんファン達には、あまり響いていなかったかも(座って、スマホを弄る人達もチラホラ

次は、東京スカパラダイスオーケストラ。夏フェスにはピッタリの熱い演奏だ。3曲目の演奏途中に、「探偵物語」の工藤ちゃん風衣装で決めた奥田民生が登場。本当は、ホーンのソロに混じり、ギターソロを披露するはずだったようだが、トラブルでギターの音が出ず。急遽、口でラッパの音を…。その後、ユニコーンの「スターな男」とスカパラの「美しく燃える森」にも参加し、民生は退場。スカパラの演奏は、さらに2曲。会場も大いに盛り上がる。

そして、KREVA。何故かのヒップホップ系。私は、これまで何度かフェスで彼のライヴを観たことがあり、割に好印象を抱いているのだが、永ちゃんファンでぎっしりの会場では、完全なアウェイだ。本人もそれを自覚しているようで、「ラップのライヴを観るのが初めての人?」と会場に問いかけ、殆どの人が手を挙げたところで、「今日来た皆さんは、ラッキーであると同時にアンラッキーです。ラッキーなのは、初めて聴くラップがいきなり最上級だから。そして、アンラッキーなのは、この後に聞くラップが駄目に聞こえるから」と、ぶちかます。強いハートだ。私は、彼のパフォーマンスを大いに楽しんだが、やはり、会場のノリは、そこそこか…

残るは、矢沢永吉のステージのみ。このフェスの場合、ここまでが長い前座という感じなのだ。KREVAが退場するや、巻き起こる「永ちゃん」コール。これが、休憩の20分間、場内のそこかしこで起こり、途切れることがない。やはり、ファンの熱さが凄い。

そして、いよいよ永ちゃん登場。フェスのタイトルにかけてか「ワン・ナイト・ショー」からパフォーマンスが始まる。もう、会場のヒートアップぶりが凄い。私もこの場に身を置けて、光栄だとすら感じる。生で彼のライヴを観るのは初めてだが、ステージから放たれるオーラが半端ない。やはり、日本で最もカリスマ性のあるロック・ミュージシャンであることに間違い無い。

アップテンポの曲を3曲続けた後、4曲目はしっとりと「SEPTEMBER MOON」。すると、ファン達は一斉に着席する。立ち上がって声援を飛ばしまくる曲、着席して静かに堪能する曲、そして(この後に出てくる)タオルを投げる曲と、しっかり区別し、それが全員に浸透しているのが、矢沢永吉ファンなのだと思い知った。

5曲目「SOMEBODY'S NIGHT」、6曲目「ラスト・シーン」。彼のアルバムを持っていなければ、ライヴに行ったことも無かった私でも、曲は結構知っているなぁと思う(今回のセットリストが、かなり分かりやすいものだったのだろう)。そして、バンド・メンバーの紹介をしているところに、隣の会場から羽鳥アナと水卜アナがやってくる。「The Music Day」の中継だ(ここでメンバー紹介を入れたのは、中継時間を合わせるクッションにするためだろう)。ドが付く鉄板曲「止まらないHa~Ha」。演奏には、スカパラのホーンセクションとMIYAVIも参加。さらに、コーラスという事で、氣志團、奥田民生、KREVAも全員登場。超々豪華なステージ。他のミュージシャンが矢沢永吉をリスペクトしているのは当然としても、矢沢永吉が、それぞれのゲストをしっかり立てている姿に、さすがボスと呼ばれるだけの器だと感動を覚える。当然、観客も大盛り上がり、これが、タオル投げの定番曲。やはり、スペシャルビーチタオルを入手しておくべきだったなと後悔。演奏後には、感極まったのか、奥田民生が涙ぐんでいたのも印象的だ。

ゲストがはけて、もう1曲「YES MY LOVE」。この流れは、本当に痺れる。いやぁ、凄いステージを観たなぁ。

演奏が終わると、スクリーンに新アルバムの告知が映し出される。ここでまた、どよめく会場。しかし、特に、最後の締めが有るわけで無く、このまま終了。あれだけ、盛り上げておいて、この終わり方は、どうなんだろう?全体の進行もそうだし、なんだか変なフェスだ。そもそも、矢沢永吉の誕生日は9月。まだ70歳になった訳じゃないのに、このタイミング…。ここからは邪推だが、矢沢永吉を「The Music Day」に出演させたかった日テレが、他のアイドル等と同じ会場で歌わせるのも畏れ多いし、どうせなら熱狂的矢沢ファンの前でのパフォーマンス(ファンのタオル投げも含め)を見せたいと考えたのではないだろうか。それなら、隣の会場で矢沢永吉をメインにしたフェスを仕立ててしまえと。まるで、「木の葉を隠すなら森の中。森が無いなら作ってしまえ」というブラウン神父ばりの作戦ではないかと思うのだ。そう考えると、矢沢永吉以外では、唯一、氣志團に中継が入った事も(冒頭の出演者だから、かなり確実に時間が読める)、今まで、矢沢永吉に会ったことが無いというMIYAVIが出演したことも(日テレが製作陣に名を連ねている公開中の映画「Diner ダイナー」の主題歌を手掛けている)、説明が付く。

まあ、日テレの強引な企画だったとしても、普段、自ら聴く機会の少ないタイプのミュージシャンのライヴをたっぷり楽しめたのは、有り難いことだ。



そして、このまま、酷暑じゃない、昔ながらの夏らしい夏になってくれれば良いのですが、それは望み薄なんだろうなぁ。