IN/OUT (2019.5.26) |
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私がインターネット接続を始めた頃、最も楽しみにしていたテキストサイト「そこはか通信」。藤井さんによるサイトの更新は終了してしまったけど、Twitterに拠点を移して発信され続ける彼の文章を読むのが大好きでした。書く題材も、その表現法も、当意即妙の受け答えも、本当に私のツボでした。しかし、先週、Twitterに流れてきたのは、彼の訃報。体調を崩されていたのは知っていたのですが、あまりにも突然。とても残念です。ご冥福をお祈りいたします。 最近のIN「information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」 @ サントリー美術館 (19.5.25)佐藤オオキ率いるデザインオフィスnendoが提案する「左脳的なアプローチ、右脳的な感じ方の双方で、日本の美術を楽しむ」という展覧会を観に、サントリー美術館に行ってきた。 東京ミッドタウンにあるサントリー美術館は、日本の古美術を主に収蔵している美術館である。その方面にはあまり興味を持っていない私は、別件で東京ミッドタウンを訪れ、前を通りかかることは何度もあったが、入館するのはこれが初めてだ。今回の展覧会は、その見せ方が非常に面白いと評判なのである、 会場に入ると、右に「inspiration?」と書かれた暗い通路。左に「information?」と書かれた明るい通路。二つの入り口がある。観覧者は、どちらの通路を選んでも良い。私は、まず、右の「inspiration?」からスタートしてみた。 黒を基調とした暗い通路の壁に、のぞき穴のような光が漏れ、そこに展示物が置かれている。が、説明の類いは一切無い。一見して古美術と分かる物もあるが、特殊な角度やライティングで見せたり、一部だけを切り取ったような見せ方になっている物も多く、説明無しでは頭の中に疑問符ばかりが浮かぶ展示も多い。古美術と言うよりも、通路全体が現代美術のインスタレーションのような雰囲気で、まさに右脳で感じる展示という印象だ。 一通り回った後、入り口に戻り、今度は、左の「information?」の方に入ってみる。白を基調にした明るい通路。展示物は、「inspiration?」と「information?」の二つの通路の中央に置かれているので、同じ物を、先ほどの反対側から観ることになる。こちらは、ごく普通の角度と照明での鑑賞。そして、背後の壁には詳細な説明がびっしりと書かれている。イラストも交えた説明は、技法から時代背景、関連する人物の紹介まで、圧倒的な情報量だ。これが、先ほどの意味がよく分からなかった展示の謎解きのようになっていて、滅法面白い。ミステリーが、一々全て、すとーんと腹落ちする感じ。古美術に疎い私でも知的好奇心を刺激されまくりだ。 ということで、この展覧会、やはり「inspiration?」→「information?」→「inspiration?」の順で見て回るのが、謎を楽しみ、謎解きを知ってから再読するという、ミステリー小説の楽しみ方と同じで、私のお薦めだ。勿論、倒叙型の推理小説のように、先に情報を仕入れてから「inspiration?」の方に進むのも有りかもしれない。 もう一つ、楽しいのが、展示の途中にインターミッション的に挿入されている、nendoによる「uncovered skies」というインスタレーション。スタッフから手渡されるビニール傘を持って、天井から白い光で照らされた通路を歩く。すると、足下の傘の影に映像が現れる。ビニール傘に偏光フィルムを用いることで、この効果を出しているとのこと。徹頭徹尾、見事に演出された展覧会だ。 直接お会いした事はなくても、日々の発信から、その人の一面はよく知った気になっている。しかも、サーバー上には、まだサイトは残っている。そういう方の訃報というのは、知人の死とも有名人の死とも違う、複雑な気持ちになってしまいます。 |