IN/OUT (2019.5.5)

「盆と正月」ならぬ「GWと正月」が一緒に来たような連休です。

大型連休で混み合う空港。器の小さい私としては、飛行機の搭乗順に、ややイライラしてしまいます。最初が、小さな子供連れや手助けが必要な人なのは分かる。沢山お金を払っているファーストやビジネス・クラスの人が次に優先されるのも分かる。ただ、航空会社のプログラムで高いステータスの人が、優先搭乗の対象というのは、どうなんだろう(僻みかしらん)。これが、割に沢山いるのです。その後、「機内混雑を防ぐため」後ろの方の座席の人から搭乗となるのですが、既に機内は結構混んでいる。自腹じゃ無くて会社の出張で搭乗マイルを貯めているだけの人が多いのにと、かつて、自分も海外出張が多い業務に就いていて、色々メリットを受けていた時のことを棚に上げて、なんだか割り切れない感を覚えてしまいます。


in最近のIN

Dolby Cinemaを試す19.4.29

DLOBYと言えば、私にとっては、カセットテープのノイズリダクション方式だ(Dolby-Cは使ったことがなかったなぁとか、東芝のADRESもあったなぁとか、語り出すときりが無い分野だ)。しかし、オーディオカセットがすっかり廃れた今、Dolby研究所は、映画の音響や上映方式の研究開発にシフトし、この分野でも大きな存在感を見せている。事業分野をシフトし、時代に流れの中で生き残っていく、見事な企業戦略な訳だが、そのドルビー研究所による最新の上映方式「Dolby Cinema」を体験しに、日本導入第2号であるMOVIXさいたま(第1号は T・ジョイ博多)に行ってきた。因みに、観たのは"Avengers: Endgame"(複数回観ると、画面の隅々に、様々な小ネタが仕込まれている事に感心する。あと、真田広之のやんちゃ芝居と、Michael Douglasのカツラについては、オモシロポイントとして強調しておきたい)。

Dolby Cinemaは、従来のTVの40倍以上の輝度を表現できるという上映技術「Dolby Vision」と、頭上を含むあらゆる方向から音を流す立体音響技術「Dolby Atmos」を採用し、さらに、劇場入り口から座席まで館内のインテリア全てのシアター・デザインも規定しているという。果たして、どのような効果があるのか、そして、今後も埼玉まで足を伸ばす価値があるのか、興味津々である。

結論としては、「本気で凄い」。本編開始前に、Dolby Cinemaのデモンストレーションが上映されるのだが、そこで紹介された「黒」の表現力には、場内からため息が洩れるほど。今まで映画館で観ていた黒とは、一段も二段も違う漆黒が表現されている。その効果は、本編でも十分に実感できた。この効果を最大限に引き出すために、場内のインテリアが真っ黒に統一されているということにも感心する。なお、Dolby Cinemaの効果をちゃんと体験できるのは、Dolby VisionとDolby Atmosに対応して製作された作品のみという制約はあるが、今後のハリウッド大作は、ほぼ、対応すると思われる。

座席の幅は従来の映画館より広めで、椅子の肘掛けには左右両方にカップ入れが装備。隣の人を気にせず、左右どちらでも好きな方にコーラを置けるのも有り難い。

という訳で、利便性のTOHOシネマズ日比谷、極上音響の立川シネマシティ(ここはスタッフの映画愛の濃さも高ポイントだ)に加え、Dolby Cinema対応劇場も、今後のシネコン選びでは外せない選択肢となりそうだ。


MICHEL CAMILO TRIO LATINO with RICKY RODRIGUEZ & ELIEL LAZO @ ブルーノート東京19.4.29

Michel Camiloの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。

かなりの頻度で来日し、その度に、時間が合う限りは観に行くようにしているMichel Camiloだが、今回は新たなプロジェクト、Trio Latinoとしての日本初公演である。トリオを組むのは、プエルトリコ出身のベース奏者 Ricky Rodriguezと、キューバ出身のパーカッション奏者 Eliel Lazo。その名の通り、ラテン系ミュージシャンによるトリオである。

いつものように、ご陽気に登場したMichel Camilo。演奏を始めるや、強烈なタッチでピアノを叩きつけ始める。いきなり圧倒される観客。前日まで、1,500席の東京国際フォーラム ホールCで"EAST MEETS WEST 2019"を楽しんでいたのだが、狭いハコの至近距離で観る超絶プレイの密度の濃さは、やはり、ホール公演とは違う興奮が有る。

三人の相性もとても良い感じ。Michelと、パーカッションのElielとの掛け合いでは、打楽器のように激しいピアノ・ソロを繰り出すMichelに、Elielが苦笑しながらお手上げというジェスチャーをするシーンもあったりして、楽しい。

ということで、徹頭徹尾、凄いプレイの応酬で、興奮しすぎで笑いっぱなし(Michel Camiloの超高速ピアノには、いつも、感心するのを通り越して、笑いが出てしまう…)のライヴだった。Michel Camiloは、秋には、ビッグ・バンドを引き連れて再来日するそうだが、今から楽しみだ。


「シド・ミード展 未来のリハーサル」@ アーツ千代田333119.5.4

アーツ千代田3331米国のインダストリアル・デザイナー Syd Meadの個展を観に、アーツ千代田3331に行ってきた。秋葉原の近く、2005年に神田一橋中学校に吸収された旧・千代田区立練成中学校を利用したアートセンターで、外観も中も、まさに中学校の校舎である。

Syd Meadは、1933年生まれ。フォード・モーターの社員としてカー・デザインに取り組んだ後、独立。インダストリアル・デザイナーの枠を超え、「ビジュアル・フューチャリスト」として活躍してきた。特に、SF映画の分野では、「Star Trek: The Motion Picture」のヴィジャー、「Tron」のライト・サイクル、「Blade Runner」の美術全般、「2010」のレオノフ号、「Aliens」のスラコ号、「Short Circuit」のジョニー5、「Mission Impossoble III」のフェイスメイカー、「Blade Runner 2049 」のコンセプチュアル・デザインなどに関わってきた。つまり、我々がイメージする「未来」のヴィジョンを鮮烈に刷り込んだデザイナーと言える。まさに巨匠。また、日本との関わりでは「YAMATO2520」や「∀ガンダム」のデザインも手掛けている。

アーツ千代田3331 展示は四つのパートに分かれている。まず「PROGRESSIONS」と題されたセクションでは、初期の水彩画から最新作まで、オリジナル作品50点が展示されている。オリジナル作でも「あぁ、Sye Meadだ」と分かるような図柄で、彼の作家性のコアな部分に触れることが出来る。

続く、「The Movie Art Of Syd Mead」には、彼の映画関連のデザイン・スケッチやイラストレーションが並ぶ。彼がSF映画史に与えた影響の大きさに驚くばかり。特に、「Blade Runner」においては、有名なスピナーだけでなく、町並みから、Deckardの自宅の浴室に至るまで、全てをデザインしていたことが分かり、この映画に対する賞賛は、監督のRidley Scottよりも、Syd Meadにこそ向けられるべきだということを再認識。残念ながら、このセクションは写真撮影不可。

アーツ千代田3331「TYO SPECIAL」と題されたセクションには、「YAMATO2520」や「∀ガンダム」など日本絡みのプロジェクトに関する設計図やイラストレーションが展示されている。私は、この辺りのアニメにはあまり詳しくないのが残念だが、オーディオ・ガイドによると、Syd Meadは、当初、ガンダムをあくまでも「兵器」としてデザインしようとしたに対し、製作側から日本的な人型ロボット・アニメのコンセプトを伝えられ、その要望に応えた結果が∀ガンダムのデザインということで、中々興味深い。

さらに「Memories Of The Future: Matsui Collection」では、この展覧会のキュレーターであるSyd Mead研究家 松井博司のコレクションから、鉛筆による下絵や、トレース画、完成に至る制作過程などが、原画で公開されている。多くは、世界初公開。この展覧会の図録にも収録されていない、会場限定公開作も何点か有り、実に有り難みのある展示となっている。

ということで、質・量共に大満足。SF映画好きは、見逃してはいけない展覧会だ。



ライヴハウスの整理番号順入場のように、淡々と、後ろの方から順番に座席番号に従って搭乗案内する航空会社って現れないものかしらん。