IN/OUT (2018.12.9)

12月に入り、いよいよ年末感が高まってきました。


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"Mandy"18.12.8

Nicolas Cage主演のアクション・スリラーを観てきた。邦題は「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」。いかにもB級映画っぽいサブタイトルが付いているが、実際にはB級とも違う、良くも悪くも「狂った」映画だ。

Francis Ford Coppolaを叔父に持ち、若い頃は青春映画に、さらに"Moonstruck(月の輝く夜に)"などのラブコメで活躍。その後は"The Rock"、"Con Air"、"Face/Off"など、アクション超大作に立て続けに出演。と、華々しい経歴を持つNicolas Cageだが、最近では、癖の強いジャンル映画での活動が目立つ。ご本人の嗜好なのか。「ニコラス・ケイジ印」というのは、ある種の特殊映画ファンを惹きつける言葉になっているような気もする、この映画も、まさにニコケイ映画だ。

ストーリーは単純。目の前で妻をカルト教団に焼き殺されたニコケイが、復讐を果たすというもの。しかし、普通のバイオレンス映画になりそうな題材なのに、何もかもが狂った、悪夢的な映像と音楽が2時間続く怪作になっている。

オープニング。King Crimsonの魂の名曲"Starless"がたっぷり流れる(私は、その情報だけで観に行くことを決めたのだ)。その後は、前半、主人公夫妻が襲われるまではゆったりしたペースで、そして、夫が復讐に燃える後半はテンポ良く物語は進んでいくのだが、その描写が一々変テコだ。

まず、主人公のNicolas Cage。普通の表情のシーンがほとんどない、というか、後半になると、顔芸で笑わせる始末。Tシャツに白ブリーフで泣き叫ぶ姿は、とてもアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優とは思えない。その彼が、カルト教団への復讐を誓って何をするかと言うと、銃器を調達するのでは無く、斧を手作りするのだ。因みに、その斧のレプリカを作って、ロビーに飾っていた映画館、シネマカリテも(良い意味で)狂っている…。

敵役のカルト教団も、かなりおかしい。Charles Mansonをモデルにしたような感じで、ナルシストの教祖に率いられたインチキ臭いカルトだが、彼らが召喚する異形のバイク集団は、もしかしたら本当の魔力を持っているのかと思わせる、人間離れした姿態で観る者を混乱させる

画面の色調もカメラワークも、そしてBGMも、全てが薬物の影響下にある狂気に支配されているような感じ。最後には、異世界での神話にも見えてくる。観る人を選ぶ作品だとは思うが、とにかく、強烈な印象を与える作品だ。個人的には、どうせなら、最後にKing Crimsonの"One More Red Nightmare"も使って欲しかったところだ。



単なるカレンダー以上に、色々と差し迫った感が強まる今日この頃ですが、同時に、冬の矢野顕子強化月間がスタート。これがあるから乗り切れるという気もしています。ありがたい。