IN/OUT (2018.8.12) |
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世間はお盆休みのところが多いですが、自分の勤務先は、昔から、夏休みは別タイミングで取る事になっています。諸々、一般的な混雑とズレるというのは、快適です。 最近のIN"Ocean's Eight" (18.8.10)Steven Soderberghのヒットシリーズの続編を観てきた。今回、Soderberghはプロデュースに回り、監督はGary Ross。続編と言っても、"Ocean's Eleven"、"Twelve"、"Thirteen"から、出演者は一新。George Clooneyが演じたDanny Oceanには妹がいたという後付け設定で、今作はSandra Bullock演じるDebbie Oceanが、女性だけの犯罪チームを結成するという趣向。 彼女らが犯罪の舞台に選んだのは、Met Gala。年に一度、5月の第一月曜日にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるファッション・イベントだ。着飾ったセレブが集結する事で、日本でもその名が知られるようになってきたこのイベントで、セレブ女優が身につけた1億5千万ドルの価値があるネックレスを奪うという作戦。Debbie Oceanは、刑務所に入所中に計画を練り上げ、仮釈放されるや、ファッション・デザイナーや、ハッカー、スリなど、特殊技能を持った女性達をリクルートしていく。かくして、Cate Blanchett、Helena Bonham Carter、Rihannaなど、豪華なメンバー集結である。さらに、ターゲットとなるセレブ女優に扮するのは、Anne Hathaway。一流女優陣が、実際にメトロポリタン美術館で撮影されたセレブイベントに、華麗なファッションで登場するという、見た目にもゴージャスな作品だ。 非常にスピーディーな展開で、練りに練った犯罪計画が果たして上手くいくのかというハラハラ感よりも、爽快感を優先したような作り。見た目に派手さの割には薄味という印象もある。 Sandra Bullockが、実にハマり役。そして、意外な存在感を放っていたのが、ハッカー役のRihannaと、スリ役のAwkwafinaという、ミュージシャン 2人。映画の中でもヒップホップ風ファッションで、Met Galaのイメージとは違うと思いきや、意外な見せ場がある。 また、本物のセレブが多数、本人役で出演しているのもお楽しみ。Katie Holmes、Kim Kardashian West、Heidi Klum、Serena Williamsなどなど。 しかし、この映画の一番の見所は、Anne Hathawayだろう。米国では(スピーチがわざとらしいとか、空気が読めないとか、性格が悪いとか)No.1嫌われ者女優という位置づけの彼女が、そのパブリック・イメージを逆手に取った役作りで弾けている。何かとバッシングされる彼女だが、その意志の強さは凄いと思う。 Suzanne Vega @ビルボードライブ東京 (18.8.10)Suzanne Vegaの公演を観に、ビルボードライブ東京に行ってきた。 1987年のセカンド・アルバム"Solitude Standing"が日本でも大ヒット。朝のダイナーの風景をアカペラで淡々と歌う"Tom's Diner"、児童虐待を子供の視点から描いた"Luka"など、普通のシンガーソングライターとは一線を画す歌詞とサウンドが印象的だった。その後も、着実に音楽活動を続けている彼女だが、私がライヴを観るのは初めてだ。 スタンディングでアコースティックギターの弾き語り。バックは、ベーシスト 1人というシンプルなステージだ。柔らかくも芯の通った歌声で、アコースティックな曲調の物が多いが、時に、ベーシストがノイジーなサウンドを奏でる楽曲もある。新しい作品は積極的には追っかけていなかったのだが、中々どうして、レベルの高いステージだ。 歌詞を重んじるタイプのミュージシャンだが、聞き取りやすい発音なのが、ありがたい。MCでは、今朝6時に東京に着いたばかりであることや、楽曲の背景となった若い頃の恋の想い出などを、ざっくばらんに話す。その合間に、Trump大統領に対するちょっとした皮肉や、#MeToo movementに対する言及など、社会派っぽい面も見せる。が、そういった事をむやみに強調する訳ではなく、全体的に自然体で、すごく真っ当な考え方の持ち主だなという感じが伝わってくる。そして、その人間性が、音楽性に直結していると感じる。 終盤には、初期のヒット曲"Luka"と"Tom's Diner"も披露してくれた。"Luka"は、やはりその歌詞に泣きそうになるが、曲自体は爽やかな雰囲気もあり、そのギャップに改めて驚く。"Tom's Diner"の方は、ベースと打ち込みサウンドが加味されたアレンジで、これはこれでカッコ良かったのだが、やはり、アカペラで訊きたかったかな。 "Wind River" (18.8.11)ワイオミング州のインディアン居留地を舞台にした、クライムサスペンスを観てきた。主演は、Jeremy Rennerと、Elizabeth Olsen。AvengersのHawkeyeとScarlet Witchの共演ではあるが、こちらは娯楽大作とは正反対の、硬派なハードボイルドだ。 Jeremy Rennerは、アメリカ先住民を元妻に持つハンター。彼が、雪深い山奥で、女性の死体を発見するところから物語は始まる。知らせを受けたFBIから派遣されたのは、Elizabeth Olsen扮する新人の女性捜査官。彼女は、時代からも世間からも取り残されたインディアン居留地の苛酷な現実にぶつかりながら、捜査を開始する。一方、彼女に協力する事になったJeremy Rennerも、過去に大きな傷を抱えていた。 どこまでも荒涼とした冬のインディアン居留地。一般米国社会から見放されたようなその土地で生き抜くためには、並外れた強さが求められる。弱い者は、厳しい現実から逃避した自堕落な暮らしを送り、悲惨な末路を辿るしかない。自らの経験から、そのことを知り尽くしているハンター。都会から送り込まれた捜査官は、そのような現実など全く知らなかったが、彼と行動を共にするうちに、元々持っていた真っ直ぐな正義感は、その強靱さを増していく。 骨太のストーリーの良心作だ。一方で、画面の切り替えと同時に時間軸をずらすなど、テクニックでも見せてくれる。ラスト近くの銃撃戦は、映画史に残るレベルだと思う。米国では、当初、4館の限定公開だったのが、そのクオリティが評判を呼び、全米に拡大公開され、興収チャート3位まで上ったということだが、それも頷ける作品だ。 なお、これだけの快作が、昨年のアカデミー賞などであまり話題にならなかったことの一因は、プロデューサーに、Harvey Weinsteinが名を連ねているからだと言われている。性犯罪を告発する骨太作を彼がプロデュースしていたというのは皮肉だが、作品の質と、それに関わっている個人の人格とは、別物だと改めて思う。 混雑時期が分散することの有り難さを実感すると、他国と比べても多い祝祭日、特にゴールデンウィークなど、お上が一斉に休む事を指示するというこの国の体質が早く改まらないかと思います。 |