IN/OUT (2017.9.3)

いつのまにか、秋っぽい気候になってきました。なんだか、イマイチ夏らしさに欠ける夏だったような感じです。


in最近のIN

"Dudley Jeczalik Langan reboot Art of Noise's In Visible Silence"@ビルボードライブ東京17.9.2

The Art of Noiseのライヴを観に、ビルボードライブ東京に行ってきた。

The Art of Noiseは、1983年にTrevor Hornらが立ち上げ、当時の音楽シーンに多大な影響を与えたZTTレコーズのサウンド・エンジニア集団が母体。YESの"Owner Of A Lonely Heart"の印象的なオーケストラル・ヒットも、彼らが手掛けている。1984年に自分たちのデビュー・アルバムをリリースしたが、当初は覆面集団という感じで、私も、彼らの素顔の印象はほとんど無い。

ステージには、オリジナル・メンバーの三人、Anne Dudley、Gary Langan、Johnathon J. Jeczalikと、PC類を操作するサポートが一人。ステージ上で目を引くのは、グリーンのCRTディスプレイ付きのシンセ、Fairlight CMIだ。1980年代に大流行した(その仕掛け人が、Art of Noiseだった訳だが)サンプリング・サウンドを支えた名機である。このシンセが鎮座しているのを見るだけで、嬉しくなってくる。

ライヴと言っても、Anne Dueleyが弾くピアノ以外は、プログラミングされたサウンドが多く、生演奏感には乏しい訳だが、目の前で"Beat Box"、"Paranoimia(後ろのスクリーンには、Max Headroomが映される!)"、"Eye of a Needle"などが奏でられているというのは、やはり感慨深い。1980年代、彼らのサウンドは、かなり先鋭的で、ZTT系のミュージシャンの中でも取っつきにくい印象すらあったが、その先鋭性は、今でも全く古びていないと思う。

本編最後は"Legs"。この曲の途中に出てくるフレーズは、Mr.マリックのテーマとして有名になったが(この部分を採り上げたマリック氏の慧眼には感心する)、やはり全曲通してこその名作だ。そして、アンコールは"Peter Gunn"。

2017年にもなって、先週は"Trevor Horn"、今週は、The Art of Noizeのライヴを観ることができるとは、ビックリである。そして、有り難いことである。


"Elle"17.9.2

Paul Verhoeven監督の新作を観てきた。

過剰な暴力と性、さらには、カソリックに対する皮肉な視線など、実にVerhoevenらしい作品だ。ハリウッドの商業娯楽大作を任されても、悪趣味ギリギリの(と言うか、ほぼ悪趣味の)やり過ぎ感溢れる映画に仕上げてしまう監督が、その内容故、ハリウッドでの製作を諦め、フランスで撮影したというだけに、作家性全開である。彼は、現在79歳だが、その創作欲は全く衰えていないようだ。そして、監督の過剰な要求に完璧に応えているのが、ヒロインを演じるIsabelle Huppertだ。

映画の冒頭、いきなり、自宅に侵入した覆面の男に襲われるIsabelle Huppert。果たして、犯人は、彼女の知人なのか?というミステリー的な要素もあるのだが、正直、私は、ストーリーはどうでも良いと感じてしまった。映画が描くのは、Isabelle Huppertが演じる主人公の人物そのものだ。幼い頃に、大きな事件に巻き込まれながらも、自立した強い自分を確立してきた主人公の複雑な人間像を、全身で演じきるIsabelle Huppertの迫力に、ひたすら圧倒される。

主人公だけで無く、この映画に登場する女性達は、皆、したたかだ。それに比して、男達の情けなさが悲しい。それもまた、Verhoeven的。原作小説に、かなり忠実な脚本ということだが、監督の個性にピッタリの作品に巡り会ったということか。中々、人には勧めにくい作品ではあるが、鑑賞後の重い印象は、ハマる人にはハマるはず。

因みに、主人公はネコを飼っているのだが、見方によっては邪悪とすら感じるネコの動物としての本能のようなものを冷徹に描くのも、流石、Verhoevenと思ってしまった。



温度よりも、湿度の高さの方が不快だったという印象ですが、お彼岸までは、また暑い日もあるのでしょうね。