IN/OUT (2017.6.25)

都議選がスタート。昔よりは減ったとはいえ、街宣車が候補者名を連呼して走り回っています。うるさい街宣車って、その候補者に対するネガティブ・イメージを植え付けるんじゃないか、という気もするのですが、効果あるのかしらん


in最近のIN

「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライーター展」@ Bunkamura ザ・ミュージアム17.6.24

Bunkamura ザ・ミュージアム米国の写真家 Saul Leiterの個展を観に、渋谷Bunkamuraに行ってきた。

Saul Leiterは、1923年 ピッツバーグ生まれ。画家を目指してニューヨークに出てきたが、カメラマンとして名を成す。Harper's BAZAARなどのファッション誌で大活躍するも、1981年、自身のスタジオを閉鎖し、商業活動の一線から退く。しかし、その後も自分自身のためにニューヨークを撮り続け、2006年、ドイツで出版された写真集で再び脚光を浴び、2013年、89歳で逝去。この展覧会は、彼の、モノクロ時代、ファッション誌に発表された作品、カラー作品、そして、絵画作品まで集めた、質・量共に充実したものだ。私が訪れたのが会期の終盤ということもあってか、行列ができる人気だった。

ファッション写真にも、どこか叙情性を感じさせる彼の写真の魅力は、やはり、ニューヨークの街角を切り取ったスナップ写真、それも、カラー作品に強く現れている。大胆な構図と、カラー写真で有りながら、色彩を最低限に抑えたような色調が、とても魅力的だ。雪のニューヨークのモノクロームな景色に赤い傘を配した作品(足跡)や、画面の上部 7割ぐらいが天蓋に覆われて真っ黒な中、下に覗くのが、やはりモノクロームに近い雪の街角という作品(天蓋)など、非常に印象的で、普段は美術展を訪れても、滅多に図録は買わない私も、思わず一冊購入してしまった。

彼の初期のカラー作品は、当時、カラーフィルムが高価だったため、消費期限切れのフィルムを使っていたという解説があったが、そのせいもあってか、カラー写真の色調も、ちょっと古びた感じになっているのが、さらに雰囲気を良くしている。最近流行りの、HDRを用いたカラー映像とは対極にある画質だが、このSaul Leiter的味わいの方を好ましい感じる人は、多いと思う。スマートフォンとSNSの普及で、誰もがスナップ写真家となっている今だからこそ、彼のハイセンスなスナップ写真に憧れる人達が行列を作ったのかもしれない。

また、1950年代、60年代頃のニューヨークの街自体が、とてもフォトジェニックだ。この雰囲気、Woody Allenの映画が好きな人にもアピールすること間違いない。


"AI KUWABARA with STEVE GADD & WILL LEE
Somehow, Someday, Somewhere Tour" @ ブルーノート東京
17.6.24

ジャズ・ピアニスト 桑原あいの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。

彼女は、1991年生まれの若手だが、今年リリースしたアルバム「Somehow, Someday, Somewhere」は、Ai Kuwabara with Steve Gadd & Will Lee名義。伝説的ドラマーとベーシストを迎えてレコーディングしただけでなく、彼らが超多忙なスケジュールを割いて、日本ツアーに参加したということで、その評価が窺い知れる。…のだが、正直、私は、彼女についての予備知識は無く、Will LeeとSteve Gaddの名前に飛びついて、この公演を観に行ったのである。

小柄で、ハキハキ喋る、元気な女の子というのが桑原あいの第一印象だが、演奏が始まると、中々の迫力だ。一部では、「ポスト・上原ひろみ」という呼び声もあるようだが、確かに、ジャズを基盤に、高速かつパワフルなピアノを響かせるという点では共通している。ただし、上原ひろみが、プログレッシブ・ロックのような奥行きある音楽(だから、私は偏愛しているのだ)なのに対し、桑原あいは、フュージョン・ド真ん中という印象だ。とても力強いタッチのピアノだが、緩急の緩の部分が、ちょっと私好みじゃ無いという気もしたが、予想以上に楽しいピアノだ。

だが、やはり、それを支えるWill LeeとSteve Gaddの方に、私の目と耳は引き寄せられてしまう。まさに、鉄板のリズム隊。トリオが丁々発止の掛け合いを繰り広げるパターンというより、若手の良さを引き出そうとするベテラン二人に乗せられ、どんどん加速していく桑原あい、という感じ。あるいは、ブルーノートが会場だったので、観客の年齢層も比較的高く、WillとSteveだけでなく、観客も含めて、おじさん達を転がす桑原あい、という見方も出来るかもしれない。

新アルバムからの曲主体のセットリストだが、アンコール曲は、Bob Dylanの"Watching the River Flow"。これを、Will Leeのヴォーカルで。私の大好物のWillのシャウトが聴けて、大いに嬉しい。Willもこの曲では、ジャンプを決めるノリノリぶり。

この日は、4日間・8ステージに渡るツアーの最終日。私は、1stと2ndの両ステージを鑑賞したのだが、やはり、こういうミュージシャンのツアーは、最終公演に限る。1stも、相当に良かったが、2ndは、楽しさ倍増。Steve Gaddのドラムの音圧も倍増。Will Leeのお茶目さも倍増。当然、ラストの"Watching the River Flow"は大盛り上がりとなり、スタンディング・オベイションが止まらない。結果、ステージを去ろうとするWillとSteveを桑原あいが引き留め、何やら説得。で、結局、予定外のアンコール2曲目に突入。

当然、リハーサルなど行っていない曲だと思うのだが、演奏が始まると、バッチリと合ったプレイ。年代の離れたプレイヤー達が、アイ・コンタクトを交わしながら、即興で音楽を創り出す姿に、ミュージシャンって、つくづくカッコ良い人種だと、改めて思う。良い公演だった。



街宣車の数は、国政選挙の時より多いような気もします。やはり、地方選の方が、東京でも、どぶ板色が強くなるのかなぁ。