IN/OUT (2016.12.11) |
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先週訪れた京都。北野天満宮のすぐ脇で、犬の糞を踏むという痛恨のミスを犯してしまったのですが、場所が場所だけに、むしろ運がついたのかも、と期待も膨らむ今日この頃でした。 最近のIN"Ants on a Shrimp" (16.12.10)世界的人気レストラン「Noma」が期間限定で東京出店した際の舞台裏を描いたドキュメンタリー映画を観てきた。タイトルは、彼らが東京で提供したオリジナル・メニュー=生のボタンエビに、調味料として蟻をまぶした一皿に因む。邦題は、「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」。 デンマーク、コペンハーゲンにあるNomaは、英国の雑誌が主宰する「世界のベストレラン 50」の常連で、一位を四度も獲得している名店。彼らがコペンハーゲンの店で提供できる席数は、年間で2万。それに対して、予約応募が100万件。この一店の存在が、デンマークを美食の国として有名にし、この国を訪れる観光客を11%増加させたとも言われている。徹底して地元の食材に拘ったメニューのため、自国の第一次産業にも大きな好影響を与えているそうだ。 そんなNomaが、2015年1月~2月の期間限定で、マンダリン・オリエンタルホテル東京に出店した。この企画は、ホテル側が客寄せに考えついた物では無く、自分たちの可能性を拡げようという、Nomaのシェフ René Redzepi自身の要望によるもの。期間中は本店を休業し、全スタッフが日本に乗り込むという、本気モードだったようだ。 映画は、事前に訪日し、日本各地の食材を調査するRené Redzepiらの様子。開店一ヶ月前から先乗りし、メニュー作りに挑戦するスタッフ。そして、いよいよ開店直前、Renéも合流しての追い込み作業を追っていく。 悪く言えば、NHKで放映しているプロフェッショナル密着番組のようでもある(私が、ドキュメンタリーを映画館であまり観ない理由でもある)。が、NHKの某番組のようにナレーションで訴えるのでは無く、登場人物達の言葉と映像だけで語っていくスタイルが、映画的と言えるか。 慣れない東京でメニュー作りに励む調理人達。それぞれの個性が丁寧に描かれていて、すっかり親近感を覚えたところに登場するRené。事前にスタッフが考え抜いたメニューを、「本店で出しているのと同じような、コピー&ペーストの物などいらない」と、バッサリ却下する。この辺り、まさに「お仕事ドキュメンタリー」調の展開で、緊張感が高まる。しかし、René Redzepiは、単に、芸術家肌の天才シェフという訳ではないようだ。スタッフそれぞれの個性を見抜きながら、時には叱り、時には誉め、常にチームワークを尊重していて、まさに、チーム・ビルディングの達人だ。 ということで、映画鑑賞中も、自分自身の仕事の進め方に思いが飛んだりして(私の仕事に芸術性は全く欠如しているが)、組織で働くビジネス・パーソン向きのドキュメンタリーだとも感じた。心地よい緊張感と達成感のある、良い作品だと思う。 ただし、「美食映画」としては、どうなんだろう? 時間をかけて事前調査を重ねた日本の食材だけを使ったメニューは、「日本の魅力再発見」と言うよりも、「ガイジンが思いついた変なニッポン」という気がしないでもない。要は、凝ってる割には(お値段も、コースで7万円程度だったそうだ)、私にとっては美味しそうじゃ無いのだ。なお、「調味料としての蟻」というのは、Noma本店でも使われているそうだ。北欧には、元々、昆虫食が文化として存在し、柑橘類の育たない地で、蟻酸を含んで酸っぱい蟻を用いたということ。もちろん、ノーマ東京では、ちゃんと日本産に拘り、長野県の蟻を用いたそうだが、それをありがたがる気はしないなぁ。 北野天満宮の御利益なのか、自動販売機で、前の人が取り忘れたと思しき釣り銭が残っていたという事態に、二度連続して遭遇。うーん、有り難いような気もするが、もう一回り大規模な御利益って訳にはいかなかったか… |