IN/OUT (2016.9.18) |
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映画館は、事前に座席をネットで予約して出かけるのが当然になった今。かつての、二本立てが当たり前で、全席自由(真ん中辺りに特別料金の指定席もあったな)。途中での出入りも、連続鑑賞も勝手気まま、という状況は、今の若い人には想像もつかないのだろうなと思います。こういう話は、あるあるネタで、共有できる人も多い。 最近のIN"Asphalte" (16.9.17)Isabelle Huppert主演のフランス映画を観てきた。 舞台は、パリ郊外の古びた団地。ここに住む三組、6人が織りなす群像劇だ。Isabelle Huppertが扮するのは、1980年代には芸術映画で活躍するも、今は忘れられつつある女優。彼女は、向かいの部屋の住むティーンエイジャーの男の子と出会う。他に、夜勤の看護師と、怪我で車椅子生活を余儀なくされている冴えない中年男。服役中の息子を持つアルジェリア移民の女性と、団地の屋上に不時着したアメリカの宇宙飛行士。それぞれ、どこか心に欠けたところを持つ孤独な男女が偶然に出会い、小さな物語を紡いでいく。 派手な展開はない。三組の男女は、いわゆる恋愛関係になるのでは無く、お互いに心の欠けた部分を少しだけ埋め合っていく。過剰に深刻になることもなく、オフビートの笑いを交えながら、淡々と描かれる物語は、大人のための寓話という趣き。 特別にフランスらしい描写が有る訳では無いが、この雰囲気にはフランス語が似合うなあと思う。6人の中で、一番突飛な設定になっているのがアメリカ人というのも、いかにもフランス人が作った映画という感じで面白い。しみじみと沁みる良作だ。 "The BFG" (16.9.17)Steven Spielberg監督の新作を観てきた。 舞台は、現代のロンドン(レーガンとエリツィンとが米露のトップだったことを示唆する台詞が出てくるが、この二人の大統領時代、ちょっとズレてるはず…)。児童養護施設に暮らす女の子が、深夜に目撃した巨人に、「巨人の国」に連れて行かれる。しかし、彼女を連れてきた心優しき巨人=Big Friendly Giantは、巨人族の中では小柄で、周りの人食い巨人から虐められている。お互い、孤独な少女とBFGは、心を通わせるようになる。 原作は、Roald Dahl。いかにも、彼らしい、子供達には熱狂的に支持されるが、一部の大人は眉をひそめるかも、という雰囲気の漂う児童文学だ。脚色は、Melissa Mathison。Spielbergとは"E. T."でもコンビを組んだ人だが、これが遺作となった。映画の最後には、彼女への献辞も映し出される。 この前に観た"Asphalte"が、大人のためのお伽噺だったが、今作は、まさに子供のためのお話。シリアスで重厚な作品から、娯楽超大作、そしてファンタジーまで、極めて幅広い分野をカバーするSpielbergだが、この映画では、リアリティよりも子供の想像力を重視したような映像に、Dahlらしいシニカル&ナンセンスな風味を加え、直球ド真ん中の「児童文学」の映画化を仕上げてきた。同じく、Dahlの原作を映画化しても、自分の作家性を前面に出しすぎてしまうTim Burtonとは大きく違うところだ。その代わり、大人向けの展開を求めては駄目な映画ではある。 ただし、児童文学の完璧な映画化とは、決して、単なる子供向け映画という事ではない。この映画のラストは、対象年齢を超えて涙するものだと思う。真の良作というのは、ジャンルを超えた普遍的な訴求力を持つのである。 ただ、昔の映画館では、上映と上映の間の休憩時間に、場内を売り子さんが歩き回って、お菓子や飲み物を売っていたという記憶は、共有できる人が少ない。私は、映画館で食べるアイス・モナカが楽しい記憶として刷り込まれているのですが…。あれは、一部の地方だけだったのかしらん? |