IN/OUT (2016.5.29) |
|
梅雨入り前の、初夏の陽気。近所の公園には、小さな子供を連れた家族が押しかけています。最近は、小型のテントを持ち込んで芝生に設営する家族が多く、昔は無かった光景だよなぁ、と思う今日この頃です。 最近のIN"Where to Invade Next" (16.5.28)Michael Moore監督の新作ドキュメンタリーを観てきた。邦題は「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」 米国を再び強大な国にすべく、国防総省に依頼されたMichael Mooreが世界を巡り、各国の優れた政策・施策を略奪してくる、という枠組みの映画だ。略奪の対象となるのは、バケーションのため、大量の有給休暇を保証されているイタリア、麻薬使用を合法としているポルトガル、ちゃんとしたフランス料理がコースで出てくる学校給食を実施しているフランス、女性の社会参加を国家レベルで後押しするチュニジアとアイスランド、大学の学費が外国籍の学生に対しても無料のスロベニア、等々。 例によって、笑いの裏に米国社会に対する毒をたっぷりと仕込んだMoore節が楽しめる作りになっているし、欧州、特に北欧の理想主義的福祉国家の姿は羨ましくなる。チュニジアのラジオ局勤務の女性が、チュニジア人であることの誇りを持ってインタビューに応える姿には、胸が熱くなった(チュニジアは、イスラーム国ではあるが、例外的に女性の地位が確立している)。が、日本人が観ると、いささか居心地が悪くなる映画でもある。日本の現実は、ここで描かれた国々(チュニジア以外は、全てヨーロッパの国)よりも、Mooreが罵倒する米国に遙かに近いのだ。 もちろん、この映画で紹介された国々/施策にも、負の側面が存在することは留意すべきで、Mooreの描き方は、ちょっと楽天的すぎると思う。何よりも、単に面白おかしいドキュメンタリーのように宣伝する日本の配給会社のやり方には、違和感を覚えるな。 "Le tout nouveau testament" (16.5.28)ベルギーのコメディ映画を観てきた。原題の意味は「新・新約聖書」。邦題は「神様メール」。酷い邦題である… コメディではあるが、かなりブラックで奇妙な味わいの映画だ。設定からして、ぶっ飛んでいる。この世は、神様が創造したものなのだが、その神様、見た目はブリュッセルに住んでいる偏屈親父。この世も(最初に作ったのは、もちろんブリュッセルだ)、動物も人間も(人間は、彼の姿に似せて作られた)、この世を律する様々な法則も(物理法則のような大きな物だけで無く、「バスタブに浸かった途端、電話が鳴る」とか「トーストを床に落とすときは、必ず、ジャムを塗った面が下になる」というあるあるネタ的な法則まで)全て、彼がPCを使って、気まぐれに作った物なのだ。暴力的で粗雑な彼におびえ、妻(一応、女神である)は、無口な冴えないおばさんになっているし、この映画の主人公である10歳の娘も虐待されている。 主人公の娘は、ついに父親に愛想を尽かし、自らの使徒を探すべく、現実世界にやってくる。目標とする使徒の数は6人。兄=イエス・キリストが従えた使徒 12人と合わせると、18人になるからだ。この18は、母親である女神のラッキー・ナンバー。なぜならば、女神は野球が好きだから…。どこまでも人を喰った設定である。家出するに当たり、娘は、こっそり父のPCを操作し,全人類に余命を伝えるメールを発信する。いきなり、携帯やスマホに届く、死亡日時までのカウントダウンに、全人類は大混乱。 設定だけ書いていると、何ともハチャメチャなのだが、堂々たる語り口で物語は転がっていく。彼女が見つける使徒たちも、ユニークな、それぞれ悩みを抱えた人達ばかり。自分の余命を知ったことで、さらに悩みが増した彼らに対し、主人公が起こす小さな奇跡(Catherine Deneuveが演じる有閑マダムが、ゴリラと恋に落ちるのが、「小さな」奇跡と呼べるかは?)。まったく予測不能な展開だ。 神様自身も、娘を追って現実世界にやってくる。が、彼は、PC無しでは、まったくの無力。単なる怒りっぽい駄目なおじさんとして、散々な目に遭う神様…。この映画、信仰心の篤い人はどう観るのだろう? 映画のラストも、想像の斜め上を行く、奇天烈かつ壮大なもの。ダークでありながらキュートなファンタジーだ。大推薦。主役を演じた子役 Pili Groyne嬢がハマり役。 あとは、途中が折れ曲がるようになっていて、上手く操作すると、地面を蹴らなくても自走できるスケート・ボードだとか、ペダルがついていない小さな子用のトレーニング・バイクとか、知らない間に流行っているアイテムも、公園には溢れていますな。 |