本国で大ヒットを飛ばしたというフランス映画を観てきた。主人公一家の名前そのままの原題に対し、邦題は「エール!」。何のこっちゃ?という邦題だ。
主人公は、フランスの田舎町の女子高生。学校に通いながら、家族が営む農場の手伝いも一所懸命にやる健気な女の子である。この一家、両親も弟も聾唖者で、彼女のみが健常者なのだ。そんな彼女が、学校で歌の才能を見いだされ、パリの音楽学校のオーディションを受けることを勧められ… というお話。
聾唖者ばかりの家族の中に、一人、素晴らしい歌声を持つ女の子という、ある意味一発アイディアを、丁寧に膨らませたストーリー。主人公を、単に健気な女の子ではなく、青春が抱える面倒くささも合わせて描いた人物描写も巧い。劇中に多用されるフレンチ・ポップス界の大御所 Michel Sardouの楽曲は、日本人の耳にも馴染んだもので、楽しい。
クライマックスで音楽が重要な役割を果たす映画というのは、それだけで感情が盛り上がるのだが、特にこの映画では、終盤に二回、主人公が歌うシーンで、ずるいけど巧いなぁと思わせる、憎いばかりの演出があり、落涙。そして、ラストの主人公の表情。Eric Lartigau監督、映画の魔法のかけ方を熟知しているなぁ。
ただ、フランスの人達って、こんなにも性的なことに開けっぴろげなのかね?というカルチャー・ギャップも感じた…。高校生に課題曲として歌わせるのが、かなりきわどい歌詞のフレンチ・ポップスというのも凄いよなぁ。