「松本隆 作詞活動四十五周年記念オフィシャル・プロジェクト」として開催されたコンサートを観に、東京国際フォーラムに行ってきた。たっぷり4時間、超豪華なステージだった。矢野さんが出演するので、例によってメモ帳片手に鑑賞。出演者と楽曲は、
- はっぴいえんど(大瀧さん不在の、細野晴臣・鈴木茂・松本隆):「夏なんです」・「花いちもんめ」・「はいからはくち」。三曲目は大瀧詠一の代わりに、佐野元春が登場。
- 太田裕美:「木綿のハンカチーフ」
- 原田真二:「てぃーんず ぶるーす」・「タイム・トラベル」
- 大橋純子:「シンプル・ラブ」・「ペイパー・ムーン」
- 石川ひとみ:「三枚の写真」
- 中川翔子:「東京ららばい」
- 美勇士:「セクシャル バイオレットNo.1」
- イモ欽トリオ:「ハイスクール ララバイ」
- 山下久美子:「赤道小町 ドキッ」
- 早見優:「誘惑光線・クラッ!」
- 鈴木准(テノール) & 河野紘子(ピアノ):松本隆 現代語訳によるシューベルト歌曲集「冬の旅」より「菩提樹」・「辻音楽師」
- 伊藤銀次 & 杉真理:「君は天然色」
- 伊藤銀次、杉真理 & 佐野元春:「A面で恋をして」
- 鈴木雅之:「Tシャツに口紅」・「冬のリヴィエラ」
- 稲垣潤一:「バチェラー・ガール」・「恋するカレン」
- 南佳孝:「スローなブギにしてくれ(I want you)」
- 南佳孝 & 鈴木茂:「ソバカスのある少女」
- 鈴木茂:「砂の女」
- 小坂忠:「しらけちまうぜ 」
- 矢野顕子:「想い出の散歩道」・「ポケットいっぱいの秘密」
- 吉田美奈子:「Woman "Wの悲劇"より」・「ガラスの林檎」
- (バンド・メンバー紹介)
- 斉藤由貴:「卒業」
- EPO:「September」
- 太田裕美:「さらばシベリア鉄道」
- 寺尾聰:「ルビーの指輪」
- はっぴいえんど:「驟雨の街」
- はっぴいえんど & 出演者全員:「風をあつめて」
バンドも豪華
- 井上鑑:音楽監督・キーボード
- 松原正樹:ギター
- 今剛:ギター
- 吉川忠英:アコースティック・ギター
- 高水健司:ベース
- 林立夫:ドラムス
- 山木秀夫:ドラムス
- 三沢またろう:パーカッション
- 比山貴咏史:コーラス
- 藤田真由美:コーラス
- 佐々木久美:コーラス・オルガン
- 山本拓夫:管楽器
- 金原千恵子:ヴァイオリン
- 笠原あやの:チェロ
オープニング。スクリーンにはっぴいえんどのアルバムジャケットが映し出され、そして、細野晴臣・鈴木茂・松本隆の三人が演奏を始める。松本隆がドラムを叩いている姿を見ることが出来るとは、感激だ。そして、大瀧詠一の不在が悲しい。なお、細野さんの第一声は「おじいちゃんの、はっぴいえんどです」。気負いの無い、いつもの細野さん節。
はっぴいえんどの演奏が終わって、まず登場したのは太田裕美。彼女が歌う「木綿のハンカチーフ」、フルコーラスを聴くと、涙が出ちゃうなぁ。歌謡曲としては型破りの、本当に凄い歌詞だと改めて思う。また、太田裕美の声は、今でも可憐。
進行役の人はおらず、スクリーンで紹介された歌手が次々と歌を披露していく構成。二曲、割り当てがある人は、間にしゃべりがあるが、一曲だけ歌う人は、登場して歌って、そのまま退場する。人数が多いのだから仕方ないが、何とも贅沢な「歌謡ショー」だ。昭和のアイドル、石川ひとみも、早見優も、声質が変わっていない。可愛い。中川翔子は、意外な選曲だが、その歌唱力に感心する。また、美勇士は、ちょっとした表情に、ご両親の面影が!
松本隆が現代口語訳を手がけたシューベルトの歌曲は、変化球だが、この日の趣旨に沿った面白い演目だ。それだけに、この時間帯にトイレに立つ人が多数いたのは、ちょっとなぁ…
Vol.1の銀次さんとVol.2の二人による「ねじれたナイアガラ・トライアングル」には感涙。松本隆の詞を語るのに、大瀧作品は欠かせない。彼が不在の今、誰が歌うのかと思っていたが、超納得の人選だ。というか、今日の裏テーマは、大瀧さんだよなぁ。
オリジナルに忠実なアレンジの歌が多い中、アグネス・チャンに提供された作品のカバーで出演した矢野さんは、ある意味、飛び道具。ピアノ弾き語りで一曲。バンドで一曲。どちらも、矢野さん自身、しばしばライヴで取り上げている曲だけに、すっかり矢野色になっている。特に「ポケットいっぱいの秘密」は、バックにTin Panの林立夫が居ることもあって、完全に矢野・ワールド。
しかし、それ以上の飛び道具、ほとんど大量破壊兵器なみのインパクトだったのが、矢野顕子の次に登場した吉田美奈子。彼女自身も、松本隆から詞の提供を受けたことが無く、薬師丸ひろ子と松田聖子のカバーで参戦したのだが、特に「ガラスの林檎」が凄かった。大胆なアップテンポ・アレンジで、強烈なオーラを放ちながら熱唱。その異様なまでの迫力に、会場もすっかり飲み込まれたという感じ。
ゲストの部、最後に登場した寺尾聰は、まさにダンディ。「ルビーの指輪」をキメた後、井上鑑とハイタッチして退場する姿に痺れた。さらに、彼は、最後に出演者全員が舞台に上がったときも、舞台端の方に居た女性陣を、さりげなく中央にエスコートするという仕草を自然体で行っていた。大人だ。
そして、再び、はっぴいえんど。ラストは、出演者全員がステージに並んで「風をあつめて」。最近では、矢野さんの持ち歌と化している曲だけに、細野さんに続いて、二番の歌唱を矢野さんが担当。本物のはっぴいえんど(一人足りないが)と共に、この曲を矢野さんが歌っている姿を見られるのは、ファン冥利に尽きる。
夜7時に始まって、11時まで。休憩無しで4時間みっちり。ほとんど全て、知っている曲ばかり(年代的に、ドンピシャ)で、全くダレることなく楽しめた。そして、改めて、松本隆の言語感覚の素晴らしさを認識するイベントだった。「歌謡曲」にも、こだわりの言葉を散りばめ、あの時代のヒット曲のクオリティを高めていたんだよなぁ。