IN/OUT (2015.5.10) |
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最近のIN「大ニセモノ博覧会 -贋造と模倣の文化史-」@国立歴史民俗博物館 (15.5.5)古今東西、様々な「ニセモノ」と「ホンモノ」の展示を通じて、それらが持つ歴史的・文化的役割を紹介するという、一風変わった展覧会を見に、千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館に行ってきた。 展示されているのは、縄文時代の腕輪(海の無い山間部の人達が粘土や石で作った、貝殻製腕輪のイミテーション)、古今東西の美術品の贋作事件、偽文書、偽金、江戸時代に流通した偽酒、さらには、音楽の複製と著作権について考察する展示から、人魚のミイラ(干物)まで、幅広い。いささか、風呂敷を拡げすぎた気もするが、それぞれの展示物には、学芸員による詳細な説明が書かれていて、どれもこれも、読み応え十分。かなりマニアック、かつ、異色の展覧会だ。 そのマニアックさが炸裂しているのが、地方の旧家での宴会場の再現。要は、呑み会の席だ。地域の名家が「家の格」を誇示するために、有名な書画(のニセモノ)を並べて宴席を催した様子を、実物大で再現。ニセモノを並べる事への非難ではなく、集める書画に地域性があることや、家の格を示すことの重要性を強調する展示なのだが、わざわざ会場内にお座敷を設営してまで再現する必要があるのか? 展覧会の目玉となっているのが、人魚のミイラだ。江戸時代の終わりから明治にかけて、日本から大量に輸出され、ペリーの日誌にも記述が残り、シーボルトは実際に購入したという代物だ。当時、和歌山を中心にミイラ製作が流行した背景の考察と、猿と鮭をつなぎ合わせるという作成手順の説明だけでも十分興味深い展示だと思うのだが、なんと、この企画のために、今回、人魚のミイラを新たに再現製作。その実物が展示されている。これまで、民俗学系の博物館はあまり行ったことが無かったのだが、こんなマニアックな学芸員が揃っているのだろうか? 素晴らしい。 他にも、一億円の札束の実物大・実物重量のイミテーションを持ってみようという企画など、小ネタも充実。非常に面白い展覧会だった。 なお、音楽の複製について考察するコーナーでは、「蓄音機を鳴らしてみよう」という企画が行われていたのだが、要は、レコード盤に針を落とすだけ。しかし、今の子供達には、目に見える溝に音が刻まれていて、そこに物理的に針を接触させて再生するというのが、大変なことらしい。なるほどねぇ。
ついでに、20周年記念で入場無料(と言っても、通常の入場料金は100円)になっている、博物館の付属施設「くらしの植物苑」を覗いてきました。桜草の展示が企画展として行われていましたが、メインは、文字通り「くらし」を支える植物。食用のウドや大麦・小麦、薬として利用するナンテンやドクダミ、糸やロープの材料となるシナノキやワタなど、地味な植物が多数植えられています。観光的な派手さは全く無い所ですが、名前を知っていても、実物を知らない物ばかりだなぁと思いながら、ぶらぶら歩くには気持ちの良い、こどもの日でした。 |