IN/OUT (2015.2.22)

出先での、時間が無い中での昼食。ここなら早いだろうと入ったファストフード店で、中々出てこない食事。イライラして店員に聞くと、手違いでオーダーが入っていなかったとのこと。しばらくして持ってきた店員は「お待たせして申し訳ありません」と、恐縮している様子なのですが、直後に「ごゆっくりどうぞ」と、マニュアル通りの一言。それ、急いで食べ始めた今は言われたく無い言葉なんですけど、と余計にイライラ。


in最近のIN

"American Sniper"15.2.21

Clint Eastwoodの監督最新作を観てきた。今年で85歳になるEastwoodだが、本国では、彼の監督作としては最高の収益を上げているという。確かに、評判通り、全く衰えを感じさせない作品だった。なお、彼は、出演こそしていないが、監督、プロデュースだけでなく、劇中の音楽でも、一曲、作曲者としてクレジットされている。

主人公は、160人以上を狙撃し、米軍史上最強のスナイパーと呼ばれたChris Kyle(映画で演じるのは、そっくりに役作りしたBradley Cooper)。米国でベストセラーとなった彼の自伝の映画化である。

映画は、彼の四度に渡るイラク派遣を軸に、回想シーンを織り交ぜながら進む。カウボーイに憧れるテキサスの青年が愛国心に目覚め、Navy SEALsに入隊。送り込まれた生き地獄のような戦場では、味方を守るため、女性や子供であっても爆弾を持っていれば狙撃し殺害する必要に迫られる。ギリギリの精神状態の中、帰国する度にPTSDに蝕まれていく心身。Eastwoodは、ドキュメンタリーのような乾いたタッチで描いていく。

この映画、題材が題材だけに、米国では、右の人からは絶賛され、左の人からは好戦的だと批判されていると聞くが、どうしてそういう評価になるのだろう? この映画は、Chris Kyleを英雄視することもなく、かといって批判する訳でも無く、過酷な戦場での体験と、それによるPTSDの苦しみ。そして、同じような境遇の帰還兵を支援する活動を通じて人間性を回復していく姿を、公平かつリアルに描くものだ。この映画を観て、戦争万歳! 狙撃手最高!と思う人がいたら、相当、おめでたいと思うのだが…

なお、Eastwood自身は、共和党員だがイラク戦争などには批判的なリバタリアンだそうだ。彼のぶれない視線がこの映画を支えているのは間違いないだろう。

ただ、ラストについては、米国ではChris Kyleは超有名人だから詳細に語るまでも無く、かつ、様々な配慮もあるのだろうが、彼に馴染みの無い日本人には、ちょっと唐突で、分かりにくいかもしれない。


"Kahaani"15.2.22

インドのサスペンス映画を観てきた。邦題は「女神は二度微笑む」。ハリウッドでリメイクが決定というニュースも納得の傑作だ。

主人公は、ロンドンからやってきた身重のインド人妻。コルカタに出張したまま失踪した夫を探しにやってきたのだ。しかし、夫が宿泊していたという宿にも、働いていたはずのオフィスにも、彼がいたという形跡は無い。やがて、二年前に起こったテロ事件の容疑者とのつながりが浮かび上がり、関係者が次々と殺されていく中、インド国家情報局のエージェントも介入してくる。果たして、彼女は夫を見つけることができるのか?

文句なしに面白いサスペンスだ。主人公が大きな腹をした妊婦という設定が、実は大きな意味を持っているところも巧みだし、彼女に協力するコルカタの警察官や、宿の子供など、脇役の描き方にも好感が持てる。ラストには、インド映画らしい驚愕のどんでん返しがあるのだが、インド映画には珍しく(?)、ほぼ辻褄の合うトリックなのだ。時間軸をずらす叙述トリックが仕掛けられているのだが、私もすっかり騙されていた。本当にお見事。

主演のVidya Balanが、強さと美しさ、そして知性を兼ね備えた妊婦を熱演。映画のクライマックスはインドの女神「ドゥルガー」を祝うお祭りが舞台になっているのだが、美しい外見とは裏腹に、10本の腕それぞれに武器を持った戦いの女神ドゥルガーと、彼女が重なり合う(邦題には、そういう意味が込められているのだろう。巧い。)。彼女を守ろうとする警察官 Parambrata Chatterjeeが、いかにもインドの好青年という感じで、役柄にピッタリ。この二人の演技は、インド映画特有のくどさがなく、この作品をグローバル・スタンダードのサスペンス映画にしていると思う。一方で、エージェント役のNawazuddin Siddiquiのアクの強さが、良いスパイスになっている。

これだけの超絶大傑作が、東京ではユーロスペースでの単館上映というのは寂しい限り。是非、多くの映画館で公開していただきたいものだ。

あ、寂しいと言えば、この映画にはダンスシーンが無い。ちょっと前なら、こういうシリアスなサスペンス映画でも、無理矢理、歌と踊りのシーンが挿入されていたのに。Vidya Balan、あれだけ美しいのだから、少しぐらい踊ってくれても良いのに(お腹の大きい役だから、やはり無理か)。



"American Sniper"の上映開始前、予告編が流れている場内で、男女(年の離れた夫婦なのか、いわゆるパパと愛人なのか、という雰囲気)の激しい口論が。あいつらを狙撃してくれ、という空気が立ちこめましたが、結局、男性の方が怒ったまま出て行ってしまいました。

ちょっとした嫌なことが頻発するというのは、自分が邪気を引き寄せてるのかもと考えたりもする今日この頃です。