IN/OUT (2014.10.5)

10月最初の週末は台風接近の大雨になりました。


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"Jersey Boys"14.10.4

Clint Eastwood監督の最新作を観てきた。御年84歳(!)の監督が選んだ題材は、彼のキャリアで初となるミュージカル(!!)。60年代に大活躍したバンド、The Four Seasonsの成功と挫折を描いたブロードウェイ・ミュージカルの映画化である。

Eastwoodは、これまでの監督作でも、しばしば音楽まで手がけてきただけに、音楽的な才能でも、非凡なものを持っているとは思う。それでも、彼が音楽映画を撮るというのは、ぴんと来なかったのだが、いざ観てみると、大ベテランの貫禄と余裕を見せつける傑作。さすがとしか言いようが無い。

古き良きアメリカを念頭に調整されたと思われる画面の色調。軽妙な語り口。今や、押しも押されぬ大巨匠となったEastwoodだが、その演出は、重さなどみじんも感じさせない遊び心に溢れたもの。この感性には、驚くばかりだ。バンドの結成から、成功、やがて生じる軋轢、解散、そして再会、と長期間にわたる物語なので、どうしても深く掘り下げた描写に欠けるところはある。特に暗い面の描き方は、あっさりし過ぎているような気もする。しかし、酸いも甘いも噛み分け尽くしたEastwoodだけに、暗黒面を端折ったと言うよりも、むしろ、そんなことを細かく言ってもしょうがないだろと、分かった上で軽く描いているように思える。と言うか、そう思わせてしまうのが、監督の底力。

そして、The Four Seasonsと、そのリード・シンガー Frankie Valliという、題材自体が魅力的だ。The Four Seasonsのヒット曲「Sherry」「Big Girls Don't Cry(邦題は、恋のヤセがまん)」「Walk Like a Man(邦題は、恋のハリキリ・ボーイ)」などは、リアルタイムじゃない世代でも耳にしたことがある大ヒット曲(当時の邦題をちゃんと字幕に出しているところもナイス)。そして、大きな不幸に見舞われたFrankie Valliが、その悲しみを乗り越えて歌うのが、今でも多くのミュージシャンにカバーされている鉄板曲「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」。

もちろん、曲の良さだけでなく、音楽に対する造詣も深いEastwood監督は、その使い方、演出も巧い。前半の、Bob Gaudioがグループに加入することを決める即興演奏シーンの音楽的高揚感、そして、終盤、Frankie Valliが「Can't Take My Eyes Off You」をお披露目する瞬間のカタルシス。涙腺決壊である。

さらに驚くべき事に、Eastwwod監督の次回作「American Sniper」は、来年1月の公開に向け、すでにポスト・プロダクションの段階らしい。まだまだ、彼の作品を楽しめるとは、何とも嬉しいことだ。



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"Under the Skin"14.10.4

Scarlett Johansson主演作を観てきた。

ハリウッドを代表するセクシー系女優の主演作とは思えない、異色のSF映画だ。舞台はスコットランド。Scarlett Johansson扮する主人公は、車で街を流しては、男を誘い、黒い沼に沈めていく。実は、彼女はエイリアンで、人間を狩っているらしいのだ。彼女を監視するエイリアンの上司みたいな奴も登場する。ただし、そういったことを説明する台詞は一切無し。全ては観客の感じるところに委ねられている。

アート系映画のような凝った映像が続く中、何とか、頭の中で物語を咀嚼しようとして、やっとこさ、これは侵略SFだな、と分かった気になってきたところで、物語はさらに捻れてくる。どうやら、彼女は、自分が狩っている人間がどのような生物なのか、興味を持ったらしいのだ。スコットランド北部、ハイランド地方の森の中で、彼女は何とも皮肉な運命を辿ることになる。

物語は、徹頭徹尾、エイリアン=Scarlett Johanssonの視点で描かれるが、人間的な感情とは大きく異なる精神構造を持っているらしいエイリアンだけに、観客が感情移入することは、極めて困難。徹底して説明を廃したストーリー展開で、本当のところ、エイリアンの目的が何なのかすら、理解することは難しい。撮影に当たっては、ゲリラ的なロケも敢行したということで、妙に生々しいドキュメンタリー調の画面に、不協和音を奏でるストリングスの劇伴が重なり、観客は、不快感ギリギリの感覚を味わい続けることになる。

観る人を選ぶ映画だと思うし、私も、再見したいかと言われれば微妙なところだが、OUTと切り捨てるには妙に引っかかる。何とも奇妙な映画だった。



明日の出勤時間帯あたりに風雨のピークが重なりそう。一方で、午後には台風が過ぎ去り、晴れるという予報。面倒な月曜になりそうです。