今週はインド音楽。1980年代からジャズ・ポップス畑で活躍するバイオリン奏者 中西俊博と、ネパール出身で、現在は東京藝大で非常勤講師も務めるシタール奏者 Sawan Joshiのジョイント・コンサートを観に、日経ホールに行ってきた。
日本経済新聞社の本社ビルにある日経ホールを訪れるのは初めてだ。座席数610席。小綺麗なホールで、音響も秀逸だったが、そこは日経本社。株主総会やシンポジウムなどにも使えるよう、座席の背面に収納型の机と手元ライトが装備されている。主催の日本経済新聞社が招いているのか、「招待客」という一般チケット客とは別の列に並ぶお上品なおじさま・おばさまが多く、客層の平均年齢はかなり高い。なんだか、色々と新鮮。
ちょっと、がっかりしたのは、バイオリン奏者とシタール奏者が、がっぷり四つに組む演奏かと思いきや、中西俊博の公演にSawan Joshiが客演しているような構成だったこと。二部構成の第一部は、中西俊博の部。もちろん、実力派のベテランなので、卒の無い演奏ではある。しかし、演奏曲が、「Smoke Gets In Your Eyes」、「Tiger Rag」、「My Favorite Things」といったスタンダードナンバーや、中西俊博が作曲したロッテ・NEWティラミスチョコレートのCM曲(これも、誰しも耳にしたことがある有名曲だ)など、当たり障りの無い曲ばかりで、どうも盛り上がりに欠ける。バックを務める、ピアノのKeiko(実力はあると思うのだが、何故、こんな個性に欠ける芸名を使うのだろう?)、ベースの木村将之、パーカッションの関根真理の演奏力も高いのだが…。中でも、関根真理の素手でハイハットを叩くアクションがカッコ良く、結局、彼女ばかり見ていた。
20分の休憩を挟んで、いよいよSawan Joshi登場。まずはインド・ネパールの古典音楽 ラーガを披露。良い音色だ。二曲目から、中西俊博とバンド・メンバーも参加し、まずはSawanのオリジナル曲「Spider Dance」。第一部の眠い演奏が嘘のような熱気。シタールと、ピアノ・ベース・バイオリンのアンサンブルは強力。関根真理のパーカションは、ここでも目覚ましいプレイなのだが、個人的には、タブラの音色が欲しかったところだ。
The Beatlesの「Norwegian Wood」は、まあ、シタールをフィーチャーしたポップスとして当たり前すぎて面白味の少ない演奏だったが、ジャズ・スタンダードの「Take Five」は新鮮な響きだった。そして、オリジナル曲「Himalayan Wind」が、またカッコ良い。ジャズ・トリオとシタールという構成のこのバンド、非常に強力だし、Sawan Joshiの作曲能力は相当に高いようだ。いやぁ、面白いものを聴くことができた。
しかし、本編最後 Chick Coreaの「Spain」の演奏の前にSawan Joshiが退場。もし、彼が参加していたら、シタールがどのように絡むのか、物凄く興味が沸くのだが。中西俊博のバイオリンは、この曲にはちょっと情念が足りないような気がするだけに、残念。
アンコールでは、再びSawan Joshiも合流。しかし、演奏曲がJohn Lennonの「Imagine」だと、意外性が無いんだよなぁ。
ということで、構成的には不満も残るのだが、シタールの面白さを堪能。協賛のFANCLから、コラーゲン飲料や発芽米パワーを込めた健康補助食品などの無料サンプルももらえ、日経ミューズサロンと銘打たれた日経主催のコンサート企画、侮りがたし。