IN/OUT (2013.8.11)

国立国際美術館夏休みで関西に行ったついでに、国立国際美術館の「貴婦人と一角獣」に行ってきました。展示されている内容は、先日観た国立新美術館での展示と同じで、その素晴らしさには改めて感嘆したのですが、国立新美術館と比べると、レイアウトや動線の設定が、かなり物足りない。建物の構造や部屋の形が違うから仕方ないとは思うのですが、「圧倒的体験」を仕掛けてくる国立新美術館のスタッフは、本当に良い仕事をしていたなぁと実感しました。国立国際美術館も、入り口の雰囲気は良かったんですけどね


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「アメリカン・ポップ・アート展」13.8.8

国立新美術館ということで、国立新美術館で始まったポップアートの展覧会を観に行ってきた。

ポップ・アートの先駆けと言えそうなRobert Rauschenbergや、Jasper Johnsの作品から、王道 Andy Warhol、Roy Lichtensteinの作品まで、質・量ともに中々の展示だ。Jasper Johnsの作品をちゃんと観たのは初めてだったが、「Map」など、そこに込められた思いがぐっと迫ってくるところが印象的だ。一方で、Warholのカラフルな作品がずらっと並ぶ展示室に入ったときのワクワク感も楽しい。

楽しい、と言えば、今回のオーディオガイドは、ナレーションが小林克也。まさに、アメリカン・ポップ・アートに適任。「The Velvet Underground」に言及するなど、本人も、楽しんで収録されたのではないだろうか。さらに、この展覧会の公式テーマ曲、上原ひろみの「Life Goes On」が聴けるのも、このオーディオガイドの楽しいところだ。ガイドの紙をペンでタッチするという新機軸の操作性も優れていた(恐らく、ガイドにマイクロドットが埋め込まれているのだろう)。本当は、森美術館のように、無料で貸し出していただきたいところだが、追加500円の価値は十分にある。

しかし、この展覧会で一番の驚きは、ここで展示されている作品の大半が、米国のJohn and Kimiko Powers夫妻がコレクションし、自宅に飾っていた物だという事実だ。展示されている作品の中には、John and Kimiko夫妻へのメッセージ付きでアーティストから贈られた物も多く、さらに、Warholはお二人の肖像を作品にしており、いやはや、すごい夫妻なのである。そういう意味で、一番興味深い展示は、作品そのものよりも、Kimiko女史のインタビュー映像だった。John氏は1999年に他界されたそうだが、Kimiko(前田喜美子)さんは健在。その自宅に何気に飾られた多数のアート作品を前に、Warholとの個人的な思い出を語る日本女性。すごい人だ。

展覧会の目玉、「200個のキャンベル・スープ缶(小さい写真じゃ分かりづらいけど、看板にもなっている)」は、Warholがまだシルクスクリーンを使う前の作品で、一つ一つ、手書きされているというのも、私には新しい発見だった。残念なのは、普通の当日券で入場したことか。前売り券には、キャンベルスープ缶が二個、付いていたらしい…


"Pacific Rim"13.8.9

Guillermo del Toroの新作を観てきた。彼は、日本の漫画・特撮にも造詣が深く、現在一線で活躍している映画監督の中では一番のオタクだろう。先日も、プロモーションで来日した際、スーツケース18個分のフィギアをお土産に購入したらしい。そのオタクが、世界中の男子中学生マインドを持ったボンクラどもに贈る、超ど迫力の「怪獣映画」である。ボンクラの一員である私も、当然、すっかり興奮してしまった。

とにかく、設定が、一々、男子中学生レベルなのである(というか、小学生男子か? いずれにせよ、褒めてます)。

  • 太平洋の深海に時空の亀裂が生じ、そこから怪獣(英語でも、そのまま"Kaiju"という単語が使われている)が出現して、太平洋沿岸の都市を襲撃する。
  • 怪獣に対して、通常兵器では歯が立たず、人類は、人型巨大ロボット=イェーガー(Jaeger = ドイツ語で狩人の意)を開発し、怪獣を撃退!
  • イェーガーには二人のパイロットが搭乗する。二人は脳をシンクロさせ、巨大ロボットを操縦!
  • パイロットの適合性のテストは、カンフー(棒術)!
  • パイロットがイェーガーに搭乗する方法は、パイルダー・オン方式!
  • イェーガーの武器は、プラズマ砲のような飛び道具だけでなく、ロケットパンチ(劇中での名称は、エルボー・ロケット)や剣も有り!
  • イェーガーが技を出すときは、当然、技の名前を叫びながら!

もう、やりたい放題。これを、2億ドルかけて、ハリウッドで実現。del Toro監督、とんでもない偉業である。

さらに、クレジットに、本多猪四郎とRay Harryhausenへの献辞があることでも分かるように、最近のCGに頼り切った特撮とは一線を画す映像が繰り広げられるのが嬉しい。怪獣とイェーガーのバトル・シーンは、着ぐるみ感溢れる特撮なのだ。いや、もちろん、実際には着ぐるみでは無くCGを使っているのだが、Transformerのような、スピード感ばかり重視した結果、何が起こっているのか分からなくなってしまう駄目CGでは無いのである。

主役は、菊地凛子嬢。なぜか、英語の台詞よりも日本語の台詞の方が棒読みっぽく聞こえるのは、監督の意図なのか? まあ、いずれにせよ、ストーリーは有って無いようなもの。とにかく、自動車を踏みつぶし、ビルを破壊しながら、怪獣と巨大ロボットが肉弾戦を繰り広げるという、ボンクラ観客が期待するものを、出し惜しみせずに見せてくれる、好きな人には堪らない超絶傑作なのだ。

Guillermo del Toro監督は、以前、大友克洋の「童夢」の映画化を目指していたのが頓挫したと聞く。本作で抜擢した芦田愛菜嬢がもうちょっと大きくなった頃に、是非、彼女をエッちゃん役にして「童夢」の企画を再起動してもらいと妄想。



これで夏休み終了。本当は、最終日に夏フェスに行きたかったところだったけど、ここは我慢。翌日が休みだったら、迷わず行っていたのだけど…。まあ、この暑さの中、参戦していたら、明日働く体力は残らないだろうな。