IN/OUT (2012.9.30)

どうやら、この辺りの台風の通過は日曜の夜ということで、生活への影響はほとんど無くて済みそうです。が、ちょっと物足りないと思ってしまうのは不謹慎かしらん。


in最近のIN

"An Evening with Bill Bruford"12.9.29

Bill Brufordプログレッシヴ・ロックとジャズ界の超大物ドラマー、Bill Brufordのイベントに出かけてきた。会場は、表参道のイベントスペース、ラパン・エ・アロ。彼は、既にライヴ活動からは退いており、今回のイベントは自伝の出版に合わせたものだ。案内によれば、
「ドラマーとしての技術、創造力について実例を交えながらPC、プロジェクターを使用し、具体的に講演(通訳付)を行う(演奏はなし)他、自伝の紹介。時間が許せば Q & Aも行う予定です。本人同席で一緒に食事をしながら懇親をはかったり、本などにサインをする機会もあります。日本語版自伝やCDなどの販売も予定」
彼の個性的なドラムスが大好きで、YESも、King Crimsonも、UKも、彼が在籍していた時期の作品を偏愛する私としては、行くしか無いイベントなのである。

イベントは、まず豊富なスライドを映しながら、彼が使用してきたドラムセットの変遷などを中心にしたBillの講演。とても興味深い話だ。しかも、見るからにナイス・ガイ。聞き取りやすい英語で話してくれるし、通訳も務めた主催者大沢知之さんとの掛け合いも良い感じ。最後にQ & Aセッションがあったが、こういうイベントに集まる濃いファンだけに、面白いAを引き出すようなQが多く、これも楽しい。最後に、A.B.W.H.のライヴでの、シモンズのエレクトリック・ドラムを駆使したソロ・パートのビデオを上映。

ここで休憩が入り、その後は、サイン会。チケットの整理番号順に一人ずつサインをしてもらうのだが、このためにYESのLPレコードを持ってきている人、さらには、スネアドラムを抱えてきた人など、さすが熱心なファンが多い。一人一人が、サインをしてもらいながら色々話しかけたり、一緒に写真を撮ったりで、時間がかかる。その間、食事(お弁当)が配られて、観客は席で食べているのだが、Billはにこやかにサインに応え続けている。全員のサインが終わったところで、ほとんど帰らずに待っていた観客から大拍手。Billご本人の人柄が素敵だし、このイベントに集ったファンの雰囲気も暖かくて、なんとも良い感じ。あの超一流ミュージシャンと、こんなにもアットホームな雰囲気を共有できたことが嬉しい。出来たてほやほやの彼の自伝日本語訳(前日、印刷されたばかり。店頭に並ぶのは10月25日から。この日、特別に会場で販売された物は、全て、直筆サイン入り!)も当然購入。期待をはるかに上回る良いイベントだった。


「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技12.9.30

東京都現代美術館東京都現代美術館で開催中の展覧会に行ってきた。ずっと行きたかったのだが、どうせなら人の少ない平日に休みを取って、じっくり観たいと思っていたら、とても休みを取れる状況じゃなくなり、気がついたらあと一週間で終了。結局、日曜日、午前10時の開館時刻に行ってみたが、既に長蛇の列。チケットを買って、入場の列に並び、ようやく50分後に入館。中も、多数の人でごった返していたが、それでも観る価値の十二分にある、大興奮の素晴らしい展覧会だった。

企画は、庵野秀明。CGの進化により、日本独自の発展を遂げたミニチュア特撮の技が途絶えようとしていることに危機感を覚え、実現した展覧会なのだ。副館長は樋口真嗣。全ての展示に庵野館長自ら解説を書き、極めて充実したオーディオ・ガイドのナレーションは清川元夢(エヴァンゲリオンの冬月コウゾウ役でお馴染みの声優)。もの凄い気合いの入り方なのである。

最初は、かつての東宝特撮映画や円谷プロなどの特撮番組で使われていたミニチュアが展示されている。本当に貴重な品々が一堂に会しているのだが、私は特に、「マイティジャック」のMJ号と「スターウルフ」のバッカスIII世の大型模型に燃えた!

これだけでも大変に充実した展示なのだが、その後に、本展覧会の目玉、スタジオジブリ 最新特撮短編映画「巨神兵東京に現る」の上映。企画:庵野秀明、巨神兵:宮崎駿、監督:樋口真嗣の強力タッグによる実写映画。宮崎駿の「風の谷のナウシカ」で言及されていた「火の七日間」を実写化したものなのだ。庵野監督らしい鬱陶しいナレーションはともかくとして、映像は本当に凄い。圧倒されて、二回続けて観てしまった。

しかし、この展覧会の本領はここからなのである。次の展示室で、この短編映画のメイキング映像が上映されているのだが、これが滅法面白い。ミニチュア特撮に拘り、3D CGを使わずに、どうやってあの映像を実現したのか。ベテランの職人達が新たなアイディアを出し合い、そして自分達自身も楽しみながら映像を作っていく姿は、驚きと感動の連続。着ぐるみでも操り人形でも無く(もちろんCGではない)、どうやって巨神兵を動かしていたのか。その種明かしには本当に驚いた。そして、犬のミニチュアにも!

そこからは、職人の技に焦点を当てた展示が続く。ウルトラマンの光る目やカラータイマーに込められた技術とか、強遠近法を利用したセットとか、どれもこれも興味深く、面白い。

東京都現代美術館そして、最後に控えているのが、ミニチュアステージ。10m四方に組まれた東京の町の中に入ることができる。ここだけは撮影可能になっているのだが、とにかく人が多い。思った通りの構図で写真を撮ろうとしても、誰かが映り込んでしまうのが困ったところだが、それでも楽しい。
東京都現代美術館東京都現代美術館「巨神兵東京に現る」で作られた、凝りまくった六畳間のセットは、窓の向こうに立って記念撮影することが可能で、順番待ちの行列が30分。それでも嬉々として並ぶ大きなお友達。

東京都現代美術館本当に面白かったのだが、よく考えれば、ここで紹介されていた職人技のかなりの部分がCGで代替可能なのだろう。技術の進歩は止めようが無いが、この職人技、本当に途絶えさせるには勿体ないと痛感する。それにしても、空いているときに丸一日楽しみたかったなぁ。因みに、セットの中に立っているのが、副館長にして短編映画の監督、樋口真嗣の写真。

東京都現代美術館に来たときのお約束、館内のベトナムカフェでフォーを食べ、ついでに、もう一つ開催中の「FUTURE BEAUTY 日本ファッションの未来性」という展示も観てきた。こちらは、80年代以降の日本ファッションの変遷を通覧するという展示。中でも、私の目を惹くのは川久保玲や渡辺淳弥の作品。やっぱりコム デ ギャルソンというのはすごいブランドだなと実感させていただきました。



特撮博物館を観終わるまでに要したのが5時間。最後は台風の接近を気にしつつ帰途に着きました。