IN/OUT (2012.9.2) |
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暗い夜道をぼーっと歩いていたら、足下に違和感が。変な物を踏みそうだと思ったとたん、靴の下から激しい振動とジジジジジッーという音を立てながら動く物体。死にかけで路上に落ちていた蝉を危うく踏みつぶすところでした。びっくりして、こちらも、声を上げそうになりましたよ。 最近のIN"Intouchables" (12.9.1)フランスで大ヒットしたという映画を観てきた。邦題は「最強のふたり」。 良い映画だったのか、判断に困る作品だ。えーと、オフィシャルサイトからストーリーを一部引用すると 「スラム街出身で無職の黒人青年ドリスと、パリの邸に住む大富豪フィリップ。何もかもが正反対のふたりが、事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった」 はい。これだけの映画。これ以上でも、これ以下でも無し。 とにかく、底が浅い。黒人青年は、犯罪歴こそあれ、純粋で優しい心の持ち主。大富豪も、金持ちの嫌みなところが微塵も無いナイス・ミドル。育った環境が違うだけで、別に正反対では無いのだ。すぐに意気投合した二人が繰り広げるエピソードは、いずれも、障害者をことさら特別視しないことで産み出されるもの。つまり、観客が事前に予想した通りの出来事が披露されていく。一方、二人が衝突するとか、深刻な壁にぶつかるとかの、重い事件は起こらない。 演出のテンポは良く、二人以外の脇役も含め、皆、楽しい演技を披露している。よく言えば、安心して観られる映画だし、観終わった後の印象も爽やかだ。しかし、心の底からの感動を味わえるような重さや深みは皆無。 しかしまあ、疲労がたまっているときには、これぐらい能天気かつイージーに「感動っぽい」気分を味わえる作品はは悪くないかな。 数年地中で暮らしてきて、やっと地上に出たら数週間の寿命。そりゃ、間際にあがきたくなるのかもしれませんが、地面に落ちた死骸に見えて、何かの弾みにいきなり騒ぎ出す、断末魔の蝉。昼間でも十分、恐怖の対象っす。 |