IN/OUT (2012.8.12)

Christopher Nolanによるバットマン＝ダークナイト三部作の完結編を観てきた。邦題は「ダークナイト ライジング」。私が嫌悪するタイプの馬鹿邦題だ。"Batman Begins"の邦題を「バットマン ビギンズ」にしたんだから、その完結編も「ライジズ」にしないと駄目だろう。

邦題はさておき、作品そのものは、実にNolan監督らしい、重厚で緊張感溢れるものだった。何より、過去二作をきちんと踏まえ、三部作の完結編として、見事に決着を付けているところが素晴らしい。

ただ、描かれている物語は極めて重い。最初から最後までテンションが張り詰め、息の抜きどころが無い164分はキツイのも確か。それでも、ラストでタイトルが表示されると（映画の冒頭ではバットマンのシンボルだけで、文字は表示されない）、三部作完結を見届けた達成感を味わえる。

気になったのは、悪役にイマイチ魅力が無いこと。ただ、前作のジョーカー = Heath Ledgerが凄すぎたので、比べるのは酷か。あと、キャットウーマン = Anne Hathaway、あともう少しだけ「キャット」っぽくっても、良かったんじゃないかな。

Trevor Hornのライヴを観に、Billboard Live Tokyoへ行ってきた。現在、共にThe Producersというグループで活動しているLol Cremeも参加。つまり、元The Bugglesと元10ccの組み合わせ。

実のところ、Trevor Hornはプロデューサーとしての印象が強く、ライヴ・パフォーマンスには期待していなかった。しかし、これがびっくり。最近観たライヴの中でもピカイチの楽しさ。もう最高だったのである。

ステージに上がったのは、ベースを抱えたTrevor Hornと、ギターを持ったLol Cremeに加え、ドラムのAsh Soan、あと、お名前を覚えていないが、ギターが二人、キーボードが二人（内、一人は、歌唱力を要求される曲でのヴォーカルも担当）、そしてコーラス・ガールが二人の計9人。演奏した曲は、The Buggles、10cc（"I'm Not in Love"を含む三曲）、YES（Trevor在籍時の"Owner of a Lonely Heart"だけでなく、彼がプロデュースした最新作"Fly from Here"も！）の曲はもちろん、Trevorがプロデュースしたt.A.T.u.、Rod Stewart、Grace Jonesらの曲も有り、アンコールではTears for Fearsの"Everybody Wants to Rule the World"と、名曲天こ盛り

Trevor Hornは、その作り出すサウンドから、尖った人を想像していたのだが、実物は柔和なおじさん。そしてベース・プレイが予想以上に巧い。テクニックでゴリゴリ魅せるライヴではないが、ベースとドラムがしっかりサウンドを支え、ギターが器用にお馴染みのフレーズをかき鳴らし、元祖オーケストラル・ヒットが轟く。そこに、コーラス・ガールの歌声が加わって、何とも楽しい。小さい会場で、TrevorとLolのリラックスしたやり取りも良い感じ。

実際、一曲目の"Video Killed the Radio Star"で、ハートを鷲掴みにされた感じだ。この曲はAsiaのライヴでGeoffrey Downesのソロ・パートとして聴いたこともあるが、断然、今回のTrevor Horn版の方が素敵だ。コーラス・ガールの歌声が胸に響き、不覚にも涙ぐむほど心に迫ってきた。The Bugglesの曲では、この他に"Living in the Plastic Age"と、"Johnny on the Monorail"を演奏。曲紹介の中で、影響を受けたJ. G. Ballardに関する言及があったのも、個人的にはグッときた。

また、"Owner of a Lonely Heart"のヴォーカルは、コーラス・ガールの一人が担当。「ラジオスターの悲劇」のコーラスお姉さんがイエスの曲のヴォーカル。ベースを弾いているのは、Trevor Horn。そして、ギターは（何故か）Lol Creme。30年ぐらい前に戻って、当時の自分に「将来、こんなライヴが観られるぞ」と言っても信じないだろうと思うような光景が展開。いやはや、本当に楽しかった。