IN/OUT (2012.7.8) |
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西からは大雨のニュースも聞こえてきますが、東京では空梅雨気味。雨が降っても長続きしない日々が続いています。それでも湿度だけは高いままで、過ごしやすくは無い。天候の影響をあまり受けない仕事をしている身としては、梅雨明け → 一瞬だけ盛夏→ すぐに初秋、となってもらいたいとワガママな思いを抱く今日この頃です。 最近のIN「トーマス・デマンド展」 (12.7.7)「構成写真」で知られるドイツの芸術家 Thomas Demandの作品展を観に、東京都現代美術館に行ってきた。「構成写真」とは、被写体を自らが制作して撮影する写真のことである。 この展覧会、構成がとても面白い。まず、入り口に、作家紹介や展示案内のようなものが無い。「先入観無しで、一度ご覧ください」という意図なのだ。作品タイトルなどを表示したパネルも、あえて作品から離して掲示してあり、余分な情報無しで写真自体を観てください、という態度が徹底している。そこで目にする写真は、一見すると、普通のホテルの浴室だったり、階段の踊り場に割れた瓶が散らばっている状況だったり。日常的な風景を切り取っただけのように見えるが、どの作品も、何か違和感のある質感を持っている。また、コマ落としアニメのような微妙な動きの動画も何点か上映されていて、こちらも何か不思議な印象の映像だ。中には、震災後の福島第一原発の制御室や、YouTubeなどで評判になった嵐に巻き込まれた客船「パシフィック・サン号」の揺れる船内の模様の動画など、元ネタが分かる物もあるが、ほとんどの被写体は、作者の意図がよく分からない。 そうして会場を一周すると、そこにパンフレットが置いてある。今度は、それを読みながら、もう一周するという趣向である。まず、作者紹介のパネルを読むと、展示されている写真や動画は、全て、作者が厚紙を使って実物大で製作した物だということが分かる。大がかりな物だと半年近く掛けて緻密に再現された「現実」。それを撮影し終わると、作品として残るのは写真だけ。厚紙で製作した現物の方は廃棄してしまうそうだ。写真に漂う微妙な違和感は、紙が持つ質感がもたらしていたのだ。 さらに、パンフレットには、作者がどこから着想を得たのかが説明されている。ホテルの浴室は、1987年にスイスのホテルで政治家の変死体が発見された事件を再現した物だとか、踊り場の情景は、ケンブリッジにあるフィッツウィリアム美術館で、来館者が階段で転倒し、踊り場にあった17世紀後半頃の貴重な瓶を割ってしまったという、当時話題になったハプニングを再現した物だとか。そういう背景を知った上で写真を見ると、また別の見方を楽しめる訳で、まさに一粒で二度美味しい効果である。この構成を考えた企画者、Good Job! また、常設展の方も、奈良美智の作品がまとめて展示してあったりして、楽しめた。さらに、この日は、7月10日から始まる「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」の事前招待会が行われていたようで、そちらの参加者でも賑わっていた。事前予約者しか観られない企画だが、「トーマス・デマンド展」の会場からも、階段の吹き抜け越しにちょっと見える箇所があり、これもまた面白そうな展覧会だ。 "Man on a Ledge" (12.7.7)Sam Worthington主演のサスペンス映画を観てきた。邦題は「崖っぷちの男」。 ホテルの高層階から飛び降りようとする男。交渉人が説得にあたるが、男は単なる自殺志望者ではなく、何か裏がありそうで…というお話。監督のAsger Lethは、ドキュメンタリー畑出身の人で、これが初めての劇映画ということだが、緊張感溢れる巧みな演出で102分の作品を手際よくまとめている。 あとから考えればご都合主義的なところも多いが、無駄の無い演出でストーリーが展開するので、そういうところは気にならない。むしろ、過去に負い目を持つ物同士が共感し絆を深める展開だとか、ラテン系美女のお色気サービス・ショットだとか、お約束をキッチリ押さえているので、安心して楽しめる。意外なオチが用意してあるラストも爽快。どう考えてもA級大作とは呼べない小品だが、ポップコーン片手の映画としては、満足度高し。
新調した単焦点レンズを付けて散歩。 50mmの画角が写真の基本だそうですが、使い慣れてないと中途半端に感じて難しいっす。 |