IN/OUT (2012.3.4)

気温だけ見ると10度を下回る寒い日でも、どこか春の気配が感じられる今日この頃です。


in最近のIN

"Pina"12.3.3

ドイツの舞踏家、Pina Bauschの世界をWim Wendersが映画化したドキュメンタリーを観てきた。邦題は「ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」

Pina Bauschは、1940年生まれ。コンテンポラリー・ダンスの振付家として独自の世界を築き上げた人だ。坂本龍一のオペラ「LIFE」にも出演していたので、私も名前には聞き覚えがあった。惜しくも、2009年に急逝。ガンと診断されてから5日後のことだったという。

彼女の友人でもあったWenders監督は、直接的にPinaの足跡を辿るようなドキュメンタリーにはしていない。「カフェ・ミュラー」「フルムーン」などの代表作を、彼女が率いていたWuppertal舞踏団が、舞台で、さらには屋外・街中で演じる様子と、その合間にメンバーが語る最小限の言葉を組み合わせた作品になっている。パフォーマンス・シーンも、単純に舞台を撮影したものでなく、時空を越え再構築されている。Pina自身の姿は、生前のフィルムが少し挿入されるだけだが、メンバーが語る彼女の思い出と、パフォーマンスによって、その不在の人物像が浮き彫りになる。さすが、ドイツ映画界の巨匠、Wenders。見事な構成だ。

さらに監督の力量が冴えるのが、その色彩感覚と、3D効果だ。屋外でのパフォーマンス・シーンでの見事な構図と色彩感覚は、言語的に理解するのが難しいコンテンポラリー・ダンスを、とてもエキサイティングに見せてくれる。また、劇映画での3D効果には、必ずしも賛同していない私だが、ダンス・パフォーマンスを3Dで映像化すると、むしろ非現実感が増幅するようで、独特の効果を生んでいると感じた。アート系映画の3D化「有り」だ。


「松井冬子展 世界中の子と友達になれる12.3.4

ヨコハマ美術館横浜美術館で開催中の展覧会に行ってきた。

松井冬子は、1974年生まれ。東京藝術大学で日本画を専攻し、博士号を取得。ということで、展示されている作品は当然日本画なのだが、題材が独特である。内蔵を引きずって歩く女性。幽霊画。仔牛の解剖図。九相図(死体が朽ちて骨になる過程を9段階に分けて描く仏教絵画)などなど。痛みや狂気が滲み出るグロテスクさが、伝統的な日本画の技法で描かれているというセンセーショナルな部分と、作者がモデルのようなビジュアルの女性ということで、注目を集めているのである。

展覧会のタイトルにもなっている「世界中の子と友達になれる」。卒業制作での作品と言うことだが、とてもインパクトがある。題名だけ見ると、ほのぼのした絵と勘違いしそうだが、作者にとってこの言葉は、絶対実現不可能な誇大妄想的狂気ということらしい。また、222cm×172cmの大作「陰刻された四肢の祭壇」も破壊力すら感じる力強さで印象深い。また、そうした大作の下絵やデッサンも展示されているので、合わせて見ると、さらに興味深く鑑賞できる。

文学で言えば、ちょうど今読んでいるエリック・マコーマックの世界にも通じるような気がしているのだが、作者が強烈に女性性を主張しているところで、より独自の世界を築いていると思う。また、印象的な作品のタイトルなど、言葉に対する感性も鋭い。この作者、おそらく、自身の美貌すら、かなり意識的にメディア・コントロールしているのだと思う。



日本人として四季の移ろいに敏感なのか、単に、杉花粉のせいで春を感じているのかは、自分でも良く分かりませんが…