IN/OUT (2012.2.26)

何故か最近、青に変わるまでのカウントダウン表示が付いた歩行者用信号が、近所で急増しています。ちょっと前まで、関西人のせっかちさの象徴とされていたと思うのですが。東京の人々の「イラチ化」が進んでいるのでしょうか。


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「らもトリップ」12.2.25

中島らもの短編小説の映像化と、縁のあった人達へのインタビューを組み合わせた映画を観てきた。製作、監督、さらに配給まで、東京藝術大学の学生達が中心になって手がけたという異色作。

公開初日に出かけたので、上演前に舞台挨拶があった。登場したのは、プロデューサーの佐藤宙信、監督(短編3本とインタビュー部で計4名)三間旭浩、今橋貴、松尾健太、中野裕之(唯一のプロ監督。あとの三人とプロデューサーは東京藝大生)、出演の嶋田久作、小島藤子、勝村政信。中野裕之(仲人が、らもさんだったそうです)が、学生スタッフを優しく見守っているところが大人の風格。怪人の印象が強い嶋田久作は、スクリーンで見るより実物の方が「普通の人」っぽかった。そして、舞台挨拶の最後は、中島らも主宰の劇団「笑殺軍団・リリパット・アーミー」の舞台でお馴染み「ちくわ投げ」。300本のカネテツ・デリカフーズ謹製のちくわが場内を乱れ飛ぶ!

舞台挨拶の後、上映開始。らもさん縁の人物、石田長生・宇梶剛士・大槻ケンヂ・竹中直人・チチ松村・中島さなえ・中島美代子・原田伸郎・古田新太・宮前賢一・山内圭哉へのインタビュー「らも語り」と、3本の短編「クロウリング・キング・スネイク」、「微笑みと唇のように結ばれて」、「仔羊ドリー」で構成されている。

「らも語り」に登場するのは、らもさんのエッセイを読んでいればお馴染みの人ばかりだが、中島さなえ嬢の肉声を初めて聴けたのが嬉しい。そして、中野監督の実に巧みな編集と、古田新太の話術に感心。

藝大生が監督した3本の短編(らもさんの作品の中で、My Favoritesとはちょっと違う選択なのが、やや残念)の中では、製作陣の年齢が近いせいか、高校生を主人公にした「クロウリング・キング・スネイク」が瑞々しい感覚に溢れていて一番楽しめた。ただ、「蛇女がヘヴィメタ」という一発アイディアのところで、もう少し笑いを爆発させてもらいたかった。3本とも、アートっぽい演出のテンポが学生監督らしいが、商業映画としては難しいかも。しかし、いつも若者に対し優しい眼差しを送っていたらもさんなら、きっと喜んでいるだろう。

映画のラストに流れるのは、中島らも自身が歌う「いいんだぜ」。放送禁止用語だらけの、しかし、らもさんの優しさが溢れまくったこの曲を選んだところが素晴らしい。製作陣、分かっているじゃないか!と涙腺に来るぜ。

雑誌、宝島の連載広告「啓蒙かまぼこ新聞」からずっとリアルタイムで追っかけていた私には、中島らもの世界を若い学生達が情熱を持って映像化してくれたこと、その心意気が嬉しい。これを機に、もっとらもさんの作品が映像化されることを期待するのである。



映画が終わったのは23時30分。新宿から乗った山手線は満員。そんな中、カバンから読みかけの本を取り出そうとしたら、何かが落ちそうに。先ほどキャッチしたちくわが3本入っていたのでした。落っことしていたら、相当恥ずかしいところでした。