IN/OUT (2011.5.8)

ゴールデンウィークの中盤は関西にいましたが、旬の話題は「大阪駅の新装開業」。新しい駅ビルの紹介で「関西では初出店となる…」という惹句を沢山聞きました。悔しいけど、経済とか文化とか、東京>>>>大阪≒他の地方中核都市>その他、っていう感じなんですよね。


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「ムーンライダーズ デビュー35周年記念『火の玉ボーイ コンサート』」11.5.5

ムーンライダーズのデビュー35周年記念公演を観に、メルバルクTOKYOに行ってきた。

ムーンライダーズ(デビュー時の表記は「ムーンライダース」)は、鈴木慶一、鈴木博文、岡田徹、武川雅寛、白井良明、かしぶち哲郎の6人組のロックバンド。リーダーの慶一だけでなく、メンバー全員が、作詞・作曲・編曲・歌唱をこなし、ソロやムーンライダーズ以外のユニットでの活動も積極的に行い、さらに、他のミュージシャンへの楽曲提供やプロデュースなどでも幅広く活動している。時に先進的すぎたり、マニアックだったりするせいか、自分達自身のメジャーなヒット曲には恵まれていないが、日本のポピュラーミュージック界に確固たる人脈を築き、大きな影響力を与え続けている存在は、日本の軽音楽界の黒幕と言えるかもしれない。いや、その影響力から言えば、超大物黒幕だろう。私自身は、矢野顕子経由で彼らの音楽を知ったのだが、矢野好きの視点から言うと、「矢野顕子が彼らの作品を多数カバーしている」という事実をして、凄い実力派バンド、という評価になる。

ということで、35周年記念ライヴである。元々は4月に予定されていたものが、震災の影響で延期になり、予定されていたゲストの内、細野晴臣と斉藤哲夫がキャンセルになってしまったが、あがた森魚、徳武弘文、松田幸一、南佳孝、矢野誠、高田漣、東京中低域、武川道子、藤野悦子、そして矢野顕子が参加。また、会場のメルパルクは、1976年5月1日にムーンライダーズが公演した場所(当時の名前は、芝郵便貯金ホール)である。因みに、その公演には、アルバム・デビュー直前の矢野顕子も、ゲスト参加している。

ステージは二部構成。第一部は、デビューアルバム「火の玉ボーイ」を全曲演奏。お目当ての矢野さんは、アルバムで言えばA面4曲目「火の玉ボーイ」から、「午後の貴婦人」、「地中海地方の天気予報」の三曲でピアノとコーラス。そして「髭と口紅とバルコニー」では、コーラスガールの一員に。あの南佳孝もコーラスに回るという豪華布陣である。

第二部は、メンバーそれぞれのソロ曲とゲストをフィーチャーした曲で構成。矢野顕子は、かしぶち哲郎の「砂丘」を共演し、さらに「達者でナ」を演奏。三時間を超えるコンサートの最後、全員が勢揃いしたアンコールは「大寒町」。鈴木博文の作品で、あがた森魚も矢野顕子も、それぞれのアルバムで取り上げている、今日の締めくくりにふさわしいナンバーだ。

実力派ミュージシャンが揃った演奏の素晴らしさは言うまでも無いが、会場には温かい雰囲気が溢れ、それほど熱心なファンとは言えない私でも、「ファンとの幸せな35年間を過ごしてきたんだな」と感じる、良い公演だった。もちろん、バンドの一員としての矢野さんの演奏もカッコ良かった。唯一、惜しむらくは、PAがあまり良くなかったこと(私の席が二階の端っこだったせいもあるだろうが)。ムーンライダーズの6人に加え、あがた森魚、南佳孝、矢野顕子など、個性的な声質の人が多いのに、楽器の音がやけに硬質で、ボーカルが埋もれてしまっていたのが残念だ。



節電がすっかり浸透してきたように、震災の影響がボディーブローのように効き続け、みんなのマインドセットが変わるのだろうと思う一方で、今年後半のキーワードが「喉元過ぎれば…」になってしまう恐れもあるのではと考えてしまう今日この頃です。