Lars von Trier監督の作品を観てきた。その過激な描写で、2009年のカンヌ映画祭で物議を醸し、日本での上映が危ぶまれていた作品だが、ようやく公開された(さすがに、ボカシの入った箇所も多かったが)。
幼い子供の死により心を病んだ妻のため、セラピストの夫は、深い森の奥の山小屋で療養を行おうとする。しかし、妻の狂気は深まり、二人のセラピーは凄惨な結果を招く。登場人物は、ほぼ、Willem DafoeとCharlotte Gainsbourgの二人だけ(あとは、鹿と狐と鴉)。ひたすら暗く、痛々しく、生々しい映画だ。一番の見所は、Charlotte Gainsbourgの演技だろう。よくぞ、ここまで監督の要求に応えたものだ。
共感を覚えるようなストーリーではないし、後味も悪い。冒頭のスローモーションのシーンは、息を呑むほどの美しさだが、その後は、悪夢的な映像ばかりになってしまう。おそらく、膨大な暗喩に満ちた映画だと思うのだが、私にはそれを読み解くだけの知識はない。暇つぶしに観るには、まったく不向きな映画だし、好きな映画に名前を挙げるのも躊躇するような作品だ。それなのに、見終わった後も、その強烈なイメージが頭に残り続ける。良く分からないけど、大変な物を観てしまったという感じ。
この感覚。観ている最中は、退屈だとさえ思えるのに、悪夢のように印象に残り続けるというのは、あの監督の作品群と同じだと感じていたら、映画の最後に「Andrey Tarkovskiyに捧ぐ」と表示されて、大納得。Lars von Trier自身が、Tarkovskiyの影響をはっきりと認めているそうだ。