IN/OUT (2011.2.20)

集合住宅の共用部のメンテナンスのため、深夜に停電がありました。個々の住居内の電気は停まらないのですが、エレベーターが停まる他、TV(アンテナから各家庭に届けるためのブースターが停止)、インターネット接続、さらに水道もストップ(ポンプが止まるため)。その連絡があったのをすっかり忘れていたため、水道が出ないのには焦りました。高層住宅の脆弱な部分ですな。


in最近のIN

「SWITCH 25th Anniversary Presents 笑福亭鶴瓶×上原ひろみ SPECIAL LIVE #3 "NOW/HERE"」11.2.14

雑誌「SWITCH」の25周年記念ライヴを観に、雪の恵比寿ガーデンホールへ行ってきた。

超絶技巧のジャズ・ピアノスト、上原ひろみ嬢と、落語家 笑福亭鶴瓶師匠のコラボレーション。一体、どんな舞台になるのか予測がつかない。ステージには、向かって左にグランドピアノ、右に高座がしつらえてある。

お二人が登場。まさに、この日発表されたグラミー賞受賞(ひろみ嬢が参加しているThe Stanley Clarke Bandが、Best Contemporary Jazz Albumを受賞!)の話題など、もっぱら鶴瓶さんが喋る。リハーサル中のひろみ嬢の物真似(鶴瓶さん、さすがの観察眼で見事に特徴を捉えていた)など、爆笑ネタ多数。マイクが苦手なひろみ嬢はほとんど喋ることなくニコニコしているだけの場面が多かったが、鶴瓶さん曰く「おぎやはぎのような "間" =引きの間、を持っている」とのこと。

一旦、退場後、改めて、第一部の開始。鶴瓶さんの出囃子「新ラッパ」をひろみ嬢が怒濤のアレンジで弾き倒したのに続き、鶴瓶さんの落語「死神」が始まる。古典落語だが、死神が女性になっているなどのアレンジが施されたバージョンで、バレンタインデー向きの演目だ。ラスト近く、井戸に降りていくシーンになって、再びひろみ嬢が登場し、効果音を奏でる。そして、下げが決まったところで、すっと "My Funny Valentine" のピアノ・ソロが始まる。見事なつながりである。

15分間の休憩を挟み、第二部。こちらは、フリートークに近い「鶴瓶噺」に、ひろみ嬢が即興で伴奏をあてるというスタイル。トークの内容は、これまたバレンタイン仕様で、鶴瓶さんと奥様の馴れ初めから結婚に至る話。因みに、鶴瓶さんが松鶴師匠に入門したのが昭和47年の2月14日だったそうだ。普段は、テレビの細切れで接することの多い鶴瓶さんのトークだが、じっくり聞くと、さすがの話芸。そこに当意即妙の音を当てるひろみ嬢。例えるなら、矢野顕子の公演で、曲の合間に矢野さんがピアノをポロポロと弾きながらMCを行っている状況の、グダグダトークをプロの話芸に、ピアノを本気の伴奏に置き換えたような感じ(知らない人には通じにくいか…)。

トークにオチが付いたところで、 "Green Tea Farm" のソロ演奏。バックのスクリーンに、それまで話のあった鶴瓶さんと奥様の写真が映されるという趣向で、第二部は終了。

アンコールで登場した二人。鶴瓶さんは脇に座り、ひろみ嬢の "I've got Rhythm"。後半、いつも以上にトリッキーな技を繰り出す大熱演。演奏終了と同時にほぼすべての観客がスタンディング・オベーション。そして、最後の最後に、SWITCHでこの企画を担当していた女性が誕生日ということで、舞台に出てもらい、ひろみ嬢の伴奏で "Happy Birthday"

ジャズと落語の組み合わせという異色のコラボレーションだったが、ヘンに芸術風になったりせず楽しめるものになったのは、やはり、この二人だからこそだろう。他の落語家だと、こんな軽妙なステージにはならなかったように思う。それにしても落語のバックにするには、あまりにも超絶技巧のピアノ。無駄に豪華である(もちろん、良い意味で)。いやはや、贅沢かつ貴重な物を見せていただいた。


"Hereafter"11.2.19

Clint Eastwood監督の新作を観てきた。

主演がMatt Damon。エグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねるのがSteven Spielberg。題材はスーパー・ナチュラル。と、キーワードを並べると派手な映画のように見えてしまうが、実際は、静かで心に深く染みる、渋い映画だった。

Matt Damonが演じるのは、死者と交信できる霊能力者。その能力を "gift=賜物" ではなく "curse=呪い" だと言う彼は、それ故、傷つき、孤独にさいなまれている。サンフランシスコに住む彼と、津波に巻き込まれ臨死体験をしたパリに住む女性テレビ・ジャーナリスト、兄を事故で亡くし心を閉ざすロンドンに住む少年、三人の物語が交互に語られる。接点のなかった三人の物語が最後に交錯し、それぞれが心の落ち着き場所を見いだすという構成が見事。

派手な要素は無く、淡々と語られる物語は、ラストにも大袈裟な盛り上がりは無い。しかし、じわじわと感動が深まり、その場で号泣することはなかったが、見終わってから数時間、ずーっと涙腺が緩みっぱなしなのである。手堅い演出、計算された色彩設計、そしてEastwood自身が手がけた音楽。その統一感も素晴らしい。Eastwood監督の安定感たるや、すごいレベルに達していると思う。恐るべき80歳。

唯一、残念だったのは、お節介な字幕。場面転換で、分かりやすくタワーブリッジを映しているのに、カタカナで「ロンドン」と字幕を出す神経は、観客を馬鹿だと思っているのか?

その渋さから、観て楽しめる人と楽しめない人がはっきり分かれそうで、誰彼構わず薦めるのは難しいような気もするが、個人的には早くも2011年、ベスト映画大賞候補に巡り会ったという感じだ。



この週末、駅前のオフィスビルも全館点検のため停電。中に入っているドラッグストアや本屋に買い物に行くつもりだったのに…。