夏休み中にシンガポール旅行に行く同僚が、自分の前後の島に一人ずついることが分かり、羨ましいやら羨ましいやら。私も、SQのマイレージだけはあるのですが、時間が取れない…。
原美術館で行われたヤン富田氏の公演を観てきた。前売り券は売り切れていたが、当日券で入ることができた。
ヤン富田氏は、1952年生まれ。スティール・ドラム奏者で、WATER MELON GROUPのメンバーでもあった。しかし、その活動は、単なる演奏者にはとどまらず、ヒップホップ、ダブ、ハウス、アシッド・ジャズ、電子音楽など、多岐に渡る分野でプロデュースなどを行い、しかも、いずれの分野でも先駆者としての役割を果たしている。
会場は、原美術館の中庭。受付で、芝生に敷くビニールと、虫除けスプレーのサービス(それでも、何カ所かヤブ蚊にやられてしまったが)。300人ほどが、思い思いに芝生の上に腰を下ろす。開演は18時。ちょうどたそがれ時で、徐々に暗くなってくる空間が雰囲気を高める。
演奏されるのは、彼が独自に注文した電子楽器、Doopeesのスージー・キム嬢のウィスパー・ヴォイスによるヴォーカルも数曲。もちろん、スティール・ドラムの演奏も有り。さらに、スージー嬢にセンサーを取り付け、彼女の脳波を音声化したサウンドを流したり、自身の心拍音を使ったりもする。キーワードとなっているのは「必然性のある偶然」。
柔らかで優しいアコースティック音と、ノイジーで尖った電子音が組み合わされたサウンド。普通のポップスとはまったく違う曲の構成。曲の間に、ヤン富田氏自ら色々と説明してくれるのだが、マニアックな用語を織り交ぜながらの解説は難解だ。しかし、彼のメッセージは明確。「音楽による意識の拡大」。この、時代錯誤的とも受け取られかねない言葉を堂々と主張し、独自の音空間を作り出すヤン富田氏。なかなかカッコ良いのである。
ご本人は、4時間分ぐらい準備してきたそうだが、周囲が高級住宅地の原美術館。野外で音を出せるのは20時までということで、時間通りに終演。暗くなった空を背景に、古い邸宅だった美術館の建物がシルエットとして浮かび上がっている。昼間は暑かったが、この時間には涼しい風も吹くようになり、とても雰囲気のある独特の音空間を満喫できた。