Denzel Washington主演の映画を観てきた。邦題は「ザ・ウォーカー」。
世界を破滅させるような戦争から30年。荒廃した大地を、一冊の本を携えて歩き続ける、謎めいた男。事前には、彼が持つ「本」の正体が謎の中心になるストーリーかと思っていたのだが、全くそんなことはなく、原題 "The Book of Eli"から想像がつく通りの、意外性のない「本」だった。物語も基本的には単純な話だ。色々と穿った見方もできるが、かなり怖い価値観をはらんでいると思う。
描き出される未来は、「マッドマックス 2」的な、暴力が支配する世界。悪人が仕切る宿場町に凄腕の風来坊が乗り込んで来るところ、さらに、Denzel Washingtonが見事な殺陣を見せるアクション・シーンは、西部劇や黒澤明の時代劇へのオマージュのようでもある。悪く言えば、どこかで観たことがあるような場面が多いのだが、ただ、見せ方が巧い。
ある時はセピア色がかり、またある時は緑色がかる画像は、実写映像でありながら、徹底的に色調を加工してある。構図のこだわりも、アメリカンコミックの絵を見ているようだ。そこに被さる、歪んだギターサウンド(音楽は、Atticus Ross。Korn、Pink、Nine Inch Nailsなどと仕事をしてきた人らしい)。実にスタイリッシュだ。
監督は、Hughes兄弟。次のプロジェクトには、あの大友克洋の傑作「AKIRA」の実写映画化が控えているそうだ。このスタイルで映像化されるとしたら、ものすごく期待できそうである。