IN/OUT (2009.9.20)

近所の水辺に、ゆりかもめが飛来してきました。秋ですね。


in最近のIN

"HAUSCHKA with Strings"09.9.19

原美術館で行われた、プリペアード・ピアノ奏者 HAUSCHKAの公演を観てきた。

HAUSCHKAは、ドイツのミュージシャン。ピアノの弦に、テープを貼ったり、金属やプラスチックを挟んだりした"Prepared Piano"(1940年に、John Cageが発明した物らしい)を演奏する。今回は、チェロとバイオリン二人ずつ、計4人の弦楽奏者を加えての公演である。会場は、原美術館の中、カフェの奥にあるホール。キャパ80人ほどの小さなホールで、PAは使わず、楽器の生音だけのライヴだ。

ホールは、中庭に面していて、本番前、ピアノに「プリパレーション」を施す様子をガラス越しに見ることができる。アップライト・ピアノの前面を外し、弦とハンマーの間にガムテープを貼ったり、弦にガラクタ(のように見えるビニール片やピンポン球など)をくっつけたり。どんな音が出るのか、想像が付かない。

18時半、公演開始。中庭に面したガラスを開け放ち、当日券の客は中庭から鑑賞するという趣向になっていて、初秋の涼しい風と虫の音が入る中、演奏が始まった。プリペアード・ピアノの音色は、それぞれの鍵盤毎に施されているプリパレーションが違うので、あるキーはこもった音質になっていたり、別のあるキーは、ピアノの音色と同時に金属音が響いたり、あるいは、ピアノの音色は出ずに、打楽器として機能するキーがあったり。一見、ガラクタが張り付いたピアノのように見えるが、楽曲毎に、どこにどのような仕掛けを施すのか周到に計算されているようだ。

演奏される曲は、穏やかな曲調で、現代音楽の堅苦しさは無い。澄んだ秋の夜風と、夜の美術館というシチュエーションが、中々良い雰囲気だ。途中、15分の休憩を挟み、2時間ほどの演奏を、まったりと楽しむ。時折、曲の解説など、HAUSCHKA自ら語るのだが、少しだけユーモアを交えた落ち着いた語り口も、好印象。

終盤、演奏中に次々とプリパレーションを外していく見せ場もあったりして、最後は素のピアノで一曲演奏し、公演終了。彼の場合、ピアノの技巧や、作曲した曲に強烈な個性がある訳ではなく、やはり「プリペアード・ピアノ」というギミックがあってこそのミュージシャンだと思う。そのプリペアード・ピアノにしても、鍵盤毎に音色を変えるというのは、今の電子キーボードを使えば、簡単にできてしまうと思うのだが、あえて、弦に異物を挟むというローテクを使い、アコースティックな響きの中で音色の変化を実現するところに意義があるのだろう。録音された楽曲をCDで聞いたり、あるいは、プリパレーションを間近で感じることができない大ホールで見たりしても、この独特の魅力は伝わらないと思う。

ということで、個性的なミュージシャンを雰囲気のある小ホールで体感できる、原美術館の好企画だった。



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