IN/OUT (2009.4.5)

この時期、ストレスの種になることの一つに、電車や駅の混雑があります。首都圏の鉄道が、分刻みであれだけ大量の人を輸送できるのは、鉄道会社のノウハウだけでなく、乗客側に自然に培われた満員電車の掟が存在するからだと思うのですが、この時期、掟を知らない新社会人・新入生が急増。結果、人の流れがスムースに行かなくなる。まぁ、自分の過去を棚に上げた文句ではありますが。


in最近のIN

"Watchmen"09.4.4

米国のグラフィック・ノベルの実写映画化作品を観てきた。

舞台は、コスチュームをまとったスーパー・ヒーロー達が実在する1985年の米国。彼らの存在と介入により、歴史は現実から少しずれたものになっている。その世界では、ニクソン大統領が長期政権を維持し、米国はベトナム戦争に勝利。一方でソ連との核戦争の脅威がギリギリまで高まっている。そんな中、条例により、スーパー・ヒーローの活動は禁止され、彼らは一般市民に紛れた生活を送っているが、政府との密約で裏面工作に携わる者や、いまだに覆面を取らず非合法活動を続けている者もいる。物語は、かつてのヒーローの一人が殺される場面から始まり、殺人の謎、引退したヒーロー達の苦悩、さらにソ連との核戦争の脅威が絡み合って進んでいく。

Christopher Nolan監督の"The Dark Knight"も、スーパー・ヒーローの存在意義を突き詰めた作品だったが、この映画はさらにその先、もはやヒーロー物の極北とも言えそうな域に達している。彼らは決して純粋な正義漢ではなく、血も肉も欲望も備えた生身の人間として描かれる。そのパワーで敵役の身体破壊をする様が生々しく描写されるだけでなく、それ以上の非道な行為すら行う姿は、殺人を自らに禁じるが故に悩むBatmanとはかけ離れた生臭さだ。そして最後には、人類全体の平和のためには、どこまでの犠牲が許されるのかを問いかける、重いテーマが浮き彫りになる。

タイトルバックで、ケネディ大統領の暗殺、アポロの月面着陸、Andy Warholのパーティー会場などにスーパー・ヒーローが写り込む映像は、"Forrest Gump"を思い出させる。どちらも、ベトナム戦争〜冷戦期、米国が抱えたトラウマの時代を、異形・異能の者を通じて再構築するような映画だと思うが、あくまでも個人の物語を貫いた"Forrest Gump"に対し、"Watchmen"が突きつけるシリアスなテーマは、やや大風呂敷を広げすぎたような印象もある。ただ、大風呂敷ではあるが、笑い飛ばすには、あまりに重い。

凝った映像は、名作の誉れ高い原作を、画面構成も語りも、ほぼ完璧に再現しているようだ。以前、手に取りかけた原作は、独特のアメコミ文体が合わず、最初の数頁でギブアップしたのだが、もう一度トライしようかという気になった。



新生活を始める人のために、ハンズやロフトの家庭用品売り場も賑わうこの時期、ついつい、こちらの物欲も刺激され衝動買いしてしまうのも、困ることの一つです。