IN/OUT (2008.10.5)

東京国際映画祭のチケット販売が開始されましたが、目当てのチケットをインターネット経由で取ろうとして失敗。受付開始直後はサーバーが混み合ってつながらず、ようやくつながったときには売り切れで、後は当日券に賭けるしかなくなってしまいました。ここしばらく、競争率の高いチケット争奪に参戦しておらず、勝負勘が鈍ったか、真剣味が足りなかったかなぁ。


in最近のIN

"Goya's Ghost"08.10.4

名匠、Milos Forman監督の新作を観てきた。なお、新作と言っても、スペインで公開されたのが2006年11月。ほぼ丸二年たってからの日本公開である。

18世紀末、悪名高い異端審問の復活(どうしてもモンティ・パイソンの最高傑作スケッチ「スペインの宗教裁判」を思い出してしまうが…)、隣国フランスでの革命勃発とナポレオン軍の侵攻、さらにはイギリス軍の上陸と、激動の時を迎えたスペインで、時代の荒波に翻弄される男女の運命を、宮廷画家 ゴヤの目を通して描く歴史絵巻だ。ゴヤと言うと、『着衣のマハ』・『裸のマハ』を描いた人、という程度の予備知識しかなかったのだが、映画を見終わってから調べてみると、この作品は実際のゴヤの生涯に即し、多くのエピソードを巧みに取り入れたストーリーになっていたことが分かる。ただ、ゴヤを直接的な主人公としないことで、単なる歴史物とはひと味違う、実に見応えのある映画に仕上がっていると思う。

実質的な主人公と言えるのは、Javier Bardem演じる神父。徹底的な俗物でありながら自己正当化にたけた実に嫌みな人物を、見事な存在感で演じている。ただ、どうしても"No Country for Old Men"での怪演を思い出してしまい、最初から悪役に見えてしまうのが困ったところだ(日本公開の順序が逆になってしまったが、実際には、"No Country for Old Men"の方が本作より後の作品)。そして、彼だけでなく、激動の中、ゴヤも一般民衆もフランス軍もイギリス軍も、皆それぞれが愚かで狡い面を見せてしまうところに、現代も見据えた監督の痛烈な視点を感じる。

そして、やはり特筆すべきはNatalie Portmanの熱演だろう。豚肉嫌いがきっかけで(!)、不条理なまでに過酷な運命に流され、肉体も精神もボロボロになるヒロインを堂々と演じきっている。この役作りは、もはや「役者馬鹿」の域に達していると思う。子役出身で高学歴と言うのは、大人の女優として大成するために、自らに相当のハードルを課さざるを得ないのだろうか(Jodie Fosterのように)。

様々な重いテーマを抱えながらも、ブラック・ユーモア的な笑いの要素を含んだ語り口には軽快さがあり、素晴らしい映画だと思うのだが、唯一・最大の問題は、その邦題だ。
「宮廷画家ゴヤは見た」
…。なんじゃ、こりゃ? ゴヤは家政婦じゃないんだから。こんな大馬鹿タイトルを付けた配給会社は、猛省すべきである。



考えてみると、最近では、自分が行きたいと思うコンサート/イベントが、必ずしも競争率の高いものじゃなくなってきたということがあるみたいです。矢野顕子にしても、観客動員数は近年、大幅に減少しているしなぁ…。