IN/OUT (2008.8.17) |
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自宅向かいの高層集合住宅がほぼ完成し、入居予定者の方々が見学に来るようになりました。一挙に近隣人口が増加することで、いまいちぱっとしないご近所商店状況がどうなるのか、期待と不安の今日この頃です。 最近のIN"The Dark Knight" (08.8.16)Christopher Nolan監督による、バットマン・シリーズの新作を観てきた。とてつもなく凄い映画を観たという気分だ。 ハリウッドでは、アメリカン・コミックの実写映画化が大ブームになっている。原作の人気に頼ればある程度のヒットは手堅いし、一般ドラマで正面切って語るには気恥ずかしい「正義」や「愛」を堂々と持ち出せるところが、製作者に歓迎されているのかもしれない。そんなアメコミを実写化するにあたっては、ヒーロー物のかっこよさ、コミックらしい非現実的な部分、そして、一般映画としての物語の奥行きを、どうバランスさせるかが肝だと思う。万遍なくバランスを取ったという点で頂点を極めたのが、Sam Raimi監督のスパイダーマンだろう。一方、屈折したヒーロー、バットマンの映画化では、バランスを無視した監督の偏向度合いが、そのまま映画の完成度につながるような気がする。Tim Burton版のバットマンが、畸形の敵役への偏愛によって傑作になっていたのに対し、Christopher Nolan監督は、ダークでヘビーなドラマを正面からぶつけ、その過剰なテンションで、アメコミ原作映画の枠を超えた大傑作に仕立て上げたと思う。 正義と悪が、実は表裏一体のものだというディレンマに翻弄される登場人物達という重さを抱えながら、スピード感を失わない演出が秀逸。さらに、The Jokerに扮したHeath Ledgerの演技が、まさに鬼気迫るものだ。ここまで徹底してカオスとアナーキーを体現した悪役は、前代未聞だろう。これが彼の遺作となったのが、本当に惜しまれる(松田優作の遺作が「ブラックレイン」だったのを思い出す)。一方で、Morgan FreemanやMichael Caineが、いつもと変わらぬ格好良さで、ヒーロー物としてのバランスを保っている。 冒頭から、敢えて「Batman」を使っていないタイトル"The Dark Knight"が意味するところを観客に突きつけるラストまで、テンションが緩むことはなく、見終わった後には、ずっしり重い印象が残る。 米国で記録的大ヒットとなっているようだが、繰り返して観る人が続出というのも頷ける大傑作だと思う。ただ、一方では、こんなヘビーでダークな映画が大衆の熱い支持を受けるというのは、なんだか社会が不健康というか、全米がゴッサム・シティ化しているのでは?、という気もする… 今は、単なる巨大な黒い壁面に、人が住み始め、窓に明かりが灯るようになった時、目の前に拡がる風景がどうなるのかも、予想できるような、できないような。 |