IN/OUT (2008.3.9)

Wes Anderson監督の新作を観てきた。邦題は「ダージリン急行」。

本編の前に、12分の短編"Hotel Chevalier"が上映される。パリのホテルで再会した恋人を描く短いフィルムで、これ自体は特別な物語ではないが、本編が始まってみると、これが前日譚だったことが分かる。なお、Natalie Portman嬢はこの短編の方だけの出演で、もったいないほどの熱演を披露。

本編は、父を亡くして以来疎遠だった三兄弟が、絆を取り戻すべく、インドで「スピリチュアル」な旅をするというロード・ムービーだ。その旅が、旅程表通りには進まず、トラブルから意外な展開へとなっていくのは、ロード・ムービーのお約束だが、その意外な展開の仕方がオフビートで、一筋縄ではない。

脱力系の笑いが随所に織り込まれているが、単なるコメディではなく、家族の再生がテーマといっても、涙の感動作という訳でもない。独特のユルいテンポが、花粉症の薬を飲んでいる身には眠気を誘う所もあるが、一見ユルいようでいて、小道具や画面構成に丁寧なこだわりが仕掛けられているところが、侮れない。使われている音楽のセンスも良く、監督の才気溢れる映画だと思う。ただ、他人には魅力を伝えにくい映画でもあるかも。