IN/OUT (2008.1.27)

エレベーターに乗り、ドアが閉まりかけたところで駆け込もうとする人の気配。ここで素早く「開く」ボタンを押してあげようとしているのに指が触れたのは「閉まる」ボタン。閉まりかけたドアに手を差し込んで辛うじて乗ってきた人が、冷たい視線を送ってくる状況というのは、実に気まずい。毎日乗っているはずのエレベーターなのに、なぜか押し間違えるんだよなぁ…


IN最近のIN

"Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street"08.1.26

Johnny Depp主演、Tim Burton監督の、ミュージカル映画を観てきた。

1979年、ブロードウェーで初演され、トニー賞8部門に輝いたミュージカルの映画化だ。しかし、ミュージカルと言っても、題材は19世紀ロンドンの伝説的連続殺人鬼。剃刀で喉を掻き切り、死体を残酷な方法で処分する理髪師を主人公にした、凄惨な復讐劇だ。これが、作家性が強いのにハリウッド大作も任されるTim Burtonの持ち味に、見事にはまっている。

鮮血の赤だけが目立つモノクロに近い暗い画面の中、完璧に役になりきっているJohnny DeppとHelena Bonham Carterが、陰惨な歌詞を歌う。残酷描写のため年齢制限がかかる作品になることに、映画会社からの圧力もあったのではと邪推もするが、ダークな物語を、笑いで薄めることもなくダークなまま描ききった、Tim Burtonが信念を貫いた演出という感じ。圧倒的だ。

冷静に考えると、トラウマになりそうな、とんでもない話なのだが、繰り返される殺人シーン自体は、過剰に恐怖感を煽り立てるような演出にはなっていない。そのため、やはり理髪師が客の喉を掻き切る話でも、志賀直哉の「剃刀」を読んだときのような後味の悪さが無いのが、救い。

とは言っても、私も含めBurtonの暗黒面が好きな人は狂喜する映画だが、Johnny Deppを前面に出したTV CMを大量に打つような、ミーハー・デップ・ファンを対象にした映画じゃないよな。



前に乗った人が押し間違えたと思われる階数ボタンが点灯したままの状況で、乗っているのは自分だけ。ボタンを二度押しすれば間違いを解除できるのは知っているけど、めんどくさいからまあいいや、と思っているときに限って、駆け込んで乗ってくる人達。その階でドアが開くと、後から乗ってきた人は、当然、私が降りるものと思って、こちらを見る。
「あ、誰かが間違って押していたみたいですね」
と言っても、全っく信じていない目で、
「おまえが間違えたんだろう」
という無言の圧力。これも、キツイ。

集合住宅のエレベーターには罠がいっぱいだと実感する今日この頃です。