食料が「大量生産」される現場を写したドキュメンタリー映画を観てきた。邦題は「いのちの食べかた」。
取材されているのは、牛、豚、鶏の種付け・肥育から屠畜〜解体までの一連の様子、鮭の加工場、トマトやレタスなどの大規模農場、岩塩採掘現場など。ナレーションも字幕も音楽も無く、映像だけが次々と流れていく。考えさせられる点も多く、また、消費者として知っておくべきことが多々含まれている作品だ。
工業製品のように、ベルトコンベアで大量かつ猛スピードで運ばれるヒヨコなど、どこか面白みも感じる映像もあるが、牛や豚の解体シーン(これもまた、ベルトコンベアの流れ作業)のような、日頃、我々の目から隠蔽されている生々しいシーンも多い。また、現場で働いている人々のランチ・タイムのシーンが意図的に多く挿入されているようだが、それは、農畜産業に携わっている人の昼食として想像されるような牧歌的なものではなく、まさに、大規模工場での労働者の食事だ。
言葉による説明を一切廃したのは、観客に何らかの価値観を押しつけることなく、ただ事実だけを提供しようという製作者の意志だろう。一方、映像の方は、左右対称の構図など、こだわりが感じられる。単に事実を列挙したのでなく、作家性が強く感じられるドキュメンタリーだと思う。しかし、劇場公開する映画としては何かもう一工夫無いと、集中して見続けるのが辛いと感じたのが残念。