IN/OUT (2006.10.15)

すっかり朝晩、涼しくなってきました。その分、寝心地がよくなったのでしょうか、やたらと寝起きが悪くなってしまいました。


in最近のIN

"Mon petit doigt m'a dit..." (06.10.14)

Agatha Christie原作のフランス映画を観てきた。邦題は「アガサ・クリスティーの 奥さまは名探偵」 。

クリスティーには、中学生の頃、どっぷりはまっていた。お小遣いで買った初めての「大人向けの本」、文庫版の「オリエント急行の殺人」を皮切りに、ハヤカワのポケミス、ミステリ文庫、創元推理文庫など、翻訳された全作品を読破した。ポアロやミス・マープルが活躍する本格推理小説が彼女の作品の本流なのだろうが、個人的には、パーカー・パイン氏、クィン氏、トミーとタペンスらが登場する変化球的作品が好きだった。クリスティー自身、これら傍流の作品は、随分と楽しんで書いたような雰囲気がする。その中でも、作者自らお気に入りのキャラクターと認めている「おしどり探偵」トミーとタペンスは、作品世界の中でちゃんと年を取っていく、数少ないキャラクターだ。初登場時は、まだ結婚前の青年だった二人だが、この映画の原作「By the Pricking of My Thumbs(親指のうずき)」では、すでに孫もできている。

最近では、すっかり読み返すこともなくなったクリスティー作品だが、フランスで映画化されたと聞いて興味深く観てきた訳だ。監督は、元々、コメディー畑の人のようで、この作品でも、色々と笑いの要素が入っているが、ストーリー自体は原作に忠実なようだ。ただし、笑いに関しては、おフランス的洒落たエスプリというよりは、ちょっと寒くなるようなギャグが多い。邦題のトホホさ加減と良い勝負だ…

ミステリ物と言っても、シリアスな謎解き物でも、ハードボイルドなアクション物でもない。フランスの田舎を舞台に、のんびりした雰囲気で、登場人物の名前がフランス風に変わっていてもクリスティーらしさをちゃんと残した、憎めない小品という感じである。

そして、何よりも驚いたのがタペンス(この映画では、"Prudence" とう名前になっているが)役の女優さん、Catherine Frot。私がイメージしていたタペンスに、まさにドンピシャリ。顔も、表情も、話し方も、動きも、びっくりするほどイメージ通りで、彼女を見られただけで、十分に価値のある映画だった。



目覚まし二個使いで遅刻は回避しているものの、油断をすると、それでも危ない。三個目の必要性を真剣に考える今日この頃です。