IN/OUT (2005.3.13)

Orchardにある紀伊國屋書店(シンガポール内には、他にも数店ある)は、東南アジア最大級を謳うだけに、日本語の書籍も相当に充実した品揃えです。が、値段は、日本の1.6倍〜1.7倍ぐらいという感じでしょうか。購入する本があらかじめ決まっているなら、Amazon等でまとめ買いした方が、送料を含めても得、ということになりますが、色々な本を手に取れる本屋さんの楽しみも捨てがたい。

サイト開設当初からずっと愛読していた「稲本喜則の座卓から」の書籍化「当面の敵」が平積みになっていました。(失礼ながら)Amazonで発注しないと、紀伊國屋には入荷しないかな、とすら思っていただけに、とても嬉しい。モニター上の横書きから紙の上の縦書きになると、また雰囲気が変わるものです。


in最近のIN

Nokia 728005.03.06)

新しい携帯電話を買った。

三年以上前からNokia 8310を使っていた。使用頻度がそれほど多い訳ではないし、普通の通話以外の機能は必要としていないので、旧型になってしまったとはいえ、必要十分だ。ちなみに、シンガポールでは、そろそろ3Gが試験運用から商用サービス開始に差し掛かる段階なのだが、別段、興味は無い。新しく買い換える必然性は全くない。

Nokia 7280 - Nokiaのサイトなぜ新しい携帯電話を買ったかというと、Nokia 7280のデザインに一目惚れしたからだ。昨年の9月に発表されて以来、気になっていたのだが、結構な値段がする(携帯端末は、日本のように電話会社が販売するのではなく、メーカーが自社ブランドで販売している。古い機種や低価格機は、電話会社の契約との組み合わせで非常に安くなるプランが色々あるが、新製品の値段は高めである)。理性を働かせて購買は踏みとどまっていたが、出張中、一瞬だけ、Nokia 8310のSIMカードの認識に不具合が発生した。電源を入れ直せばすぐに復旧する程度の問題だったが、これを自分への口実に、速攻、途中経由のChangi空港の免税売店で購入してしまった。

この7280。詳しくは、→Nokiaのサイト、を見れば分かるが、徹底的にデザインに拘った端末である。表面はピアノ・ブラック仕上げ。非使用時には鏡になる液晶。アクセントに使われている革。洋服に付いているようなタグ。本体をスライドさせると現れるカメラレンズ。テンキーを廃した操作部。長方形ではなく、わずかに傾いた平行四辺形の断面。実際に手に取ってみると、光沢のある表面は指紋や脂が目立ってしまうし、微妙ながたつきが、プラスチックの安っぽさを払拭しきれていない感じはある。それでも、見れば見るほど、ほれぼれするデザインで、持っているだけで嬉しくなってくる。

ただし、操作性は犠牲になっている。操作に使うのは、電源のオン・オフ、発着信の二つのキーと、3つのメニュー選択系キー。それに加えて回転する(iPod風?)Navi Spinnerだけ。キーを押してメニューを呼び出し → スピナーを回して候補を選択し → 確定キーで決定。というのが基本操作だ。つまり、電話番号の入力は、一桁ずつ、「スピナーを回して番号を選び → 確定キーで決定」、というアクションを繰り返さなければならない。この端末を見せびらかしても、最初は皆、珍しがるが、操作法を説明すると、あきれ顔で「こんなんじゃ、いらないや」と言う人がほとんどだ。

機能面も、突出したところは無い。カメラで撮影できる画像サイズは、640x480という、今時、かなり控えめのスペックだし、液晶画面は非常に小さく、文字が読みづらい。

名誉挽回のために付け加えるなら、Bluetooth対応なので、簡単にPCと接続でき、端末だけでは面倒な電話番号リストの作成・編集が効率的に行える。登録した電話番号に音声タグを付けておけば、声だけで希望の番号に電話をかけられる。ただし、音声タグの機能は、音声を言語として認識するのでは無い。単純に電話番号リストに記憶させておいた音声パターンと照合するだけだが、言語に依存しないので逆に便利とも言える(名前の読みを日本語発音で登録すれば大丈夫)。

以前は、圧倒的シェアを誇っていたNokiaだが、カメラ機能への取り組みや、小型化などで出遅れた感があり、最近は、Motorola、Samsung、Sony Ericssonなどに圧され気味のように見える(これらのメーカーの製品は、日本市場の携帯端末に近いテイストを持っていると思う)。そんな中、デザイン優先と割り切ったこの製品を世に送り出すとは、Nokiaの面目躍如だと私は思うが、実際には、一部の好事家にしか売れない商品かもしれない。でも、持っていて楽しいのだ。



同時に買ってきたのが、村上春樹と佐々木マキによる「ふしぎな図書館」。村上氏の短編集「カンガルー日和」に収録されている「図書館奇譚」を改稿して、小綺麗な装丁を施し、1,429円=36.70シンガポール・ドルで売りつけるという、あざとい出版物です。「カンガルー日和」自体をリアルタイムで読んでいるので、買う必然性は無いのだけど、ついレジに運んでしまうのが、我ながら悲しい。10分で読み終わり(挿絵はともかく、言葉遣いを改めた部分には違和感がある)、さらに悲しい。村上氏って、たまに、こういうセコイ商売をするんだよなぁ…