IN/OUT (2003.10.26) |
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先週の金曜日がDeepavaliで、この週末は三連休でした。インド正月とも言われています。この他に、マレー正月、中国正月、西暦の正月と、他民族国家らしく祝日が設定されているのですが、祝日全体の数だと、日本よりも遙かに少ない。しかし、貴重な三連休だった割には、何も事前に予定を立てず、ぱっとしないまま日曜の夜に… 最近のIN"Kill Bill: Vol. 1" (03.10.23)Quentin Tarantino監督の新作を観てきた。 全編、Tarantinoの趣味炸裂。ちょっと暴走し過ぎとも思えるが、人物設定、セリフ、音楽、殺陣、映像表現、全てやりたい放題だ。血飛沫も切り刻まれる肉体も半端な量ではなく、人によっては嫌悪感を抱く映像だと思う。しかし、リズムが合った私は、もう興奮しっぱなしである。映画オタクTarantinoの脳内で再構築された日本の風景も、まったく無問題。 アメリカ映画を観ながら、今回ほど自分が日本人で良かったと思ったことは無い。服部半蔵=ソニー・千葉が鍛えし日本刀を持ったUma Thurmanと、白い和服に身を包んだLucy Liuが、なぜか日本語で啖呵を切りながら、雪の日本庭園で死闘を繰り広げる。流れるは梶芽衣子が歌う「修羅の花」。これで燃えずにどうする。 出演者達が皆、とても充実した演技を披露しているのが印象的だ。Uma Thurman嬢の熱演はもちろん、Lucy Liu姐さんのかっこよさにしびれる。栗山千明嬢(ゴーゴー夕張 という役名も、いかす)とJulie Dreyfus嬢の体を張った怪演も素晴らしい。Tarantino監督と俳優達の目指すベクトルが見事に一致しているような一体感が感じられ、気持ちよい。 そういう訳で、ニッポン・(ボンクラ)マインドど真ん中にびしびしと剛速球を決められて、私は大喜びしていたのだが、他のシンガポール人観客にはピンと来ない場面も多かったらしい。変なタイミングで笑い声が起こったり、画面で起こったことの意味を確かめようとするひそひそ話があちこちから聞こえてきたりしたのが、ちょっと悔しい。 "Marcel Marceau 80th Anniversary Tour" (03.10.19)Marcel Marceau氏のマイム公演を観に、Victoria Theatreへ行ってきた。 二部構成の第一部は、"Pantomimes of style"と題し、四つほどのマイムを披露。当たり前だが「壁」みたいな単純な隠し芸的なものではなく、静的な舞踏を思わせるものもあれば、繊細な手先の動きを見せたり、コミカルなスケッチで笑いを誘うなど、幅広く肉体を駆使した表現が続く。ただ、味わいはあっても、はっとするほど切れ味のある動作、という印象はなく、やや退屈に感じる場面もあった。 第二部は、彼のお馴染みキャラクター「Bip(赤い花のついた山高帽をかぶったキャラ)」のパフォーマンスである。「ライオン使い」や「陶器売り」などに扮したBipの軽妙な動きに場内の笑いが絶えない。やはり、私のような初心者には、こういう笑いを前面に出した演目の方が取っつきやすく、素直に楽しい。 シンプルな照明と、椅子と踏み台程度の最低限の小道具。そこにBipの帽子に付いた赤い花が映える。場面転換で登場する女性の衣装とポーズも、洒落ている。私の隣の席がフランス人夫婦だったのも、おフランス風エスプリを増長させてくれる。しかし、後ろの席の男性が、何かというと連れの女性に「今のは犬の散歩」など、舞台上の動きを一々解説するのが鬱陶しい。それにまた感心する女性も困ったちゃんだ。Marceau氏のパフォーマンスを、ジェスチャーゲームに矮小化されてもねぇ… 先に、切れ味のある動作が無い、と書いてしまったが、Marceau氏の80歳という年齢を考えれば、驚異的な肉体のコントロールだ。カーテンコールに応える柔和な笑顔が、実に素敵な味わいだった。 ギャビン・ライアルの「もっとも危険なゲーム("The Most Dangerous Game" by Gavin Lyall 1963年)」読了。評価の高いアクション小説ですが、実際に手に取るまでずーっと、この有名なタイトルのことを誤解していました。「ゲーム」って「遊戯」や「勝負」の意味じゃ無いのですね。なるほどなるほど。そのうちまた、ゲームドライヴに行きたいと休暇予定を考える今日この頃です。 |