IN/OUT (2003.5.25)

シンガポールのマスメディアは、Singapore Press Holdings (SPH)と、MediaCorpの2グループが全てを牛耳っています。元々、新聞関係がSPH、放送関係がMediaCorpという棲み分けだったのですが、競争原理の導入と自由化という建前で、SPHがSPH MediaWorksという子会社を作り、放送事業に参入。同時に、MediaCorp傘下のMediaCorp Pressが新聞事業に参入しました。言うまでもありませんが、どちらも報道内容は、べったり政府寄り。

両者の競争が最も目立つのが、毎朝発行されている無料タブロイド紙です(駅やオフィスビルの入り口で配布されています)。SPHの"Streats"を、後発のMediaCorpの"Today"が発行部数で追い抜いたというのが、第三者調査機関の発表でしたが、先週のStreatsは、一面に堂々と、「800,000人が読んでいる」とのコピーを掲載。これは、発行部数を大幅に上回る数字のはず。さっそく、「どういう根拠の数字なのか?」と噛みつく記事をTodayが掲載しました。

収入を広告に依存している無料タブロイドだけに、いかに広告主にアピールするかにしのぎを削っているのでしょう。たかだか人口400万人の国で、広告料の総体は限られているのですから、なおさらです。それよりは、無料だからと手を抜かず、記事の質で勝負してもらいたいものですが…(記者の数が不足しているのか、メインの英語紙"Straight Times"に優秀な記者が集中してしまっているのか、タブロイド紙の記事は、あまりレベルが高くないというのが、もっぱらの評判なのです


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Singapore Philatelic Museum (03.05.25)

先々週のSingapore Art Museum、先週のAsian Civilisations Museumに続いて、今週はSingapore Philatelic Museumに行ってみた。料金は、定価2ドルのところ、今なら1ドル。ここも、元は華人学校の建物だったそうだ。

Philatelic、すなわち切手収集博物館である。名前からすると、コレクターの自慢の品を集めた、私のような門外漢にはつまらないところという先入観があったのだが、なかなかどうして、良くできた施設だった。いかにもコレクターズ・アイテム、という展示物もあるが、それよりも、切手を通して、シンガポールの近・現代史や、文化を紹介することに力を入れているのだ。そして、これが、非常に成功していると思う。なまじ、「アジア文明」みたいな大風呂敷を広げるのではなく、切手という身近な切り口に特化したことで、親しみやすく興味を引く展示になっている。

シンガポールの近代史で避けては通れない、日本による占領時代に関する展示も多い。しかし、これも、他の施設にありがちな煽動的なものではなく、淡々と当時の新聞などが紹介されていて、ニュートラルな印象を受ける。

さて、二階の一室で行われている特別展は、"President's Collection - Ong Teng Cheong"。シンガポールで最初の、選挙によって選ばれた大統領、Ong Teng Cheong氏のコレクションだ。彼は、切手収集を趣味としていたらしい。ここでも、コレクション紹介よりも、収集品などを通して、Ong Teng Cheong氏自身のパーソナリティにスポットを当てることが主眼となっているようだ。中には、留学時代にやりとりしたラヴレターなどもある。首相の陰に隠れて、存在感が薄いように感じられるシンガポール大統領だけに、これもまた、興味深い展示だった。

わざわざ外国人観光客が時間を割いて見に来るほどのことは無いかもしれないが、在住者には、一度行ってみて損は無い博物館だと思う。



歌手や俳優など、いわゆるタレントさんは、この二つのグループのいずれかに属しています。広告などの写真には、タレントの名前に "MediaCorp Artiste" もしくは"SPH MediaWorks Artiste"という肩書きがついています。昔の日本で、映画スターが映画会社の所属だったのと同じような感じなのでしょうか。

バラエティー番組や、ドラマ、シット・コムなど、それなりの数の番組がシンガポールで製作されていますが、出てくる芸能人はだいたい同じ面子。芸能界の層の薄さは、人口400万人だから、いたしかたないところです。

その分、芸能人といえども、かなり身近な存在になっています。よほどの人気者でない限り、芸能人が普通に町を歩いていて、周りの人も特に騒いだりしないということが、日常的だったりします。