1998年11月に急逝されたギタリスト、大村憲司氏のトリビュート・コンサートを青山劇場にて観覧。出演は、憲司氏ゆかりのミュージシャン、高野寛 / 遊佐未森 / 渡辺香津美 / 大貫妙子 / 近藤房之助 / 徳武弘文/ 高橋幸宏 / 矢野顕子 / Char / 柳ジョージ / 高水健司 / 中村哲 / バカボン鈴木 / 村上“ポンタ”秀一/ 小原礼 / 沼澤尚 /浜口茂外也らの各氏に加え、憲司氏の息子さん、大村真司さんもギタリストとして参加。
大村憲司氏のギタープレイは、矢野さんのライヴやCDで何度も耳にしていた。速弾きのようなけれんみのあるテクニックを見せつけるというタイプじゃなかったと思うが、音色や音のタイミングが絶妙で、聴いていて思わず嬉しくなるようなフレーズが多かった。彼のトリビュート・コンサートに、豪華ミュージシャンが参加、ということで、期待するところの大きいライヴではあったが、それだけのために日本往復(先週も行ったばかりなのに)、というのは、散財だと思いつつの再訪日である。
が、コンサートが終わってみれば、こりゃ、まったく散財なんかじゃなかった。基本は、各人二曲ずつ担当し、最後に憲司氏の作品を数曲セッション、という構成だったが、どこもかしこも見所ばかりだった。特に印象深いところを挙げるなら
- 高橋幸宏氏のドラムスとリードヴォーカルに、矢野さんのピアノとコーラスが絡んだ「Radio Junk」。憲司氏や矢野さんが参加したYMOのワールドツアーでのナンバーだ。まさか、今、ライヴで聴けるとは。
- 矢野さんによる「また会おね」。バックは、高橋幸宏氏のドラムスと小原礼氏のベースのみ。これは、憲司氏が大好きだったという矢野さんのナンバーだが、今回の演奏では敢えてギター抜き。それが、憲司氏の不在を際だたせるという、心憎いアレンジだった。それにしても、幸宏 & 小原のリズム隊は、やっぱり良いわ。昔も今も、一番好きな組み合わせだ。
- 渡辺香津美氏の超絶技巧ギターソロ。上手すぎ。
だいたい、この三つだけで、十二分に元は取れたという感じだが、他の楽曲も名演ばかり。矢野さんは、ソロで「BAKABON」も披露し、また、高橋幸宏氏の「春がいっぱい」や大貫妙子氏の「新しいシャツ」でもピアノを担当。Char氏のバックや大村真司さんをフィーチャーした演奏でもバックを務めていたが、バンド・マスターではなく、バック・ミュージシャンの一員としての矢野さんのプレイを観るのは久しぶりだった。これがまた、いつ練習したのかと思う、的確なサポート。他の参加ミュージシャンにしても、決してリハーサルを重ねるだけの準備時間があったとは思えないのだが、全員がクオリティの高い演奏で、プロ・ミュージシャンの凄さを実感するとともに、その演奏の原動力であっただろう憲司氏への皆の思いを垣間見た気がする。
亡き父の作品を、ベテランミュージシャン達と共演し終えた真司さんが、皆と握手・抱擁を交わすラストには、こちらもホロリとしてしまい、つくづく良いコンサートであった。