IN/OUT (2000.5.21)
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MRTに乗っていると、シンガポール人はまだまだ満員電車には馴染んでいないな、と感じます。

乗降口近くにかたまって、奥に詰めようとしない。車内で新聞を大きく広げて読む。携帯電話で大声で話す。隣の席の人と大声で話す。たまには、中間に何人か他人をはさんでいても、知り合い同士で大声で話す。インド系住民は男同士で手をつないでる(これは満員電車内のマナーとは関係ないか...)。

ただ、当地の人は、日本ならまだまだ乗れるぞ、という程度の混み具合でも、次の電車を待つ場合が多い。ぎゅうぎゅう詰めの中で、新聞を縦に四つ折りにして読む技を習得している日本人の方が、変な適応力がありすぎるのかも....


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LRTで行こう  (00.5.21)
昨年開業して以来、どんなものだか気になっていたLRTに乗ってきた。

LRT(Light-Rail Transit)とは、神戸のポートライナーとか東京のゆりかもめのように、無人運転で、軌道上をゴム車輪の車両を走らせるシステムである。MRT(Mass Rapid Transit)が、幹線部分の大量輸送を担うのに対して、MRTの駅から周辺のニュータウン区域内へのアクセスを提供するのが、その役割ということだ。現在、Bukit Panjang線の一路線のみ営業しているが、今後、さらに路線を増やしていく計画らしい。もっとも、私が住んでいる近所にそういった計画路線は無いので、もっぱら好奇心だけで、小一時間かけてBukit Panjangまで出かけてきた次第。

実際に見てみると、車両は、一両か二両編成で、市街地を走る鉄道と言うよりは、国際空港のターミナル間移動に用いられているシャトルシステムのような感じだ。ちゃちと言えばちゃちなんだけど、これで高層団地群の中を縫うように走っていくのは、なかなかに未来っぽい感覚がする。団地のすぐ近くを走るときには、団地住民のプライバシーに配慮して、自動的に一瞬のうちに不透明になる「ハイテク曇りガラス」が車両の窓ガラスに採用されているのも、さすがだ(六甲アイランドの新交通システムでも同様のガラスが使われていたっけ)。路線バスやMRTと共通のプリペイド方式のチケットが使え、当地の公共交通システムの秩序だった開発には、いつもながら感心する。


「ユービック」  (00.5.20)
どうもこのところ、読書傾向がSFに偏ってしまっている。で、今週は、Philp K. Dickの「ユービック」を読了。

なるほどねぇ。結局はいつものディック調テーマに「半死者」ってアイディアを一発盛り込んだだけ、と言っちゃえばそれまでのような気がするけど、とりあえず「IN」に挙げとかないと落ち着かないほど、久々に楽しく読めた小説だった。ちょっと村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を思い出した。
訳者あとがきは、「ねたばれ」になってるようで、いただけない。


"Young Frankenstein"  (00.5.19)
下に書いた、"The Bone Collector"のDVDを買ったときに、一緒に購入。今まで、何度も観ているのだが、今回購入後も、続けて2回観てしまった。

この映画の監督、Mel Brooksは、私の最も好きなコメディ映画監督だ。とにかく「お約束ギャグ」にこだわりまくった演出が気持ち良いのである。自身が主演している作品も多いのだが、この作品は共同脚本のGene Wilderが主演で、Mel Brooksは監督に専念している(オオカミと猫の鳴き声として、声だけ出演)。その分、彼独特の自虐ギャグが目立たず、バランスの取れた、万人が笑える作品になっているように思う。

とにかく、出演者が皆(Gene Hackmanも出てる!)、役柄にピッタリというか、他の出演作では見せないようなキレた演技をしているところに、監督の演出手腕が伺える。今日も2回とも、観ながら何度も大笑いしてしまった。この後も、まだまだ繰り返して観てしまいそうだ。



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"The Bone Collector"  (00.5.20)
ちょっと前に公開されたときは見逃してしまったのだが、その後、どうしても見なくてはならないような情報を入手。とりあえず、先に原作本をゲットして読了後、ちょうど発売されたばかりのDVDを手に入れた。

原作本に関しては、よくできたエンターテインメント小説、という程度の感想しか持てなかった。ストーリーも人物設定も工夫されているし、読んでいる最中は、続きが気になって次々とページを進めていく、ということになってしまったんだけど、読み終わってみると、なんか底が浅いという印象になってしまう。良くも悪くも、暇つぶし本、という感じ。

で、映画。先に原作を読んだのは失敗だったようだ。どうしても、原作から改悪されたところが気になってしまって、評価がすっかり下がってしまった。

何よりも、原作の特徴である「詳細な鑑識作業」の描写がきちんとされていないのが痛い。鑑識結果から推理を進め犯人に迫っていく、という原作の迫力が失われ、主人公が単なる「ちょっと勘の鋭い名探偵」になってしまっていて、彼が捜査の主導権を取る必然性が見えてこない。

その主人公だが、性格設定からすっかり毒気が消えて、正義の権化のような人物像になっている。ハリウッドで四肢麻痺の人物を主人公にする上で、あの毒気をそのまま持ち込むのは無理だったのか。原作で白人だったのを、黒人に設定を変えたのは、その分少しでも個性を出そうとした、ハリウッド流ポリティカリーコレクトな設定変更という気がする。いかにもあざとい感じ。

他にも、原作を読んでいて「映像化するなら、ここが肝だな」、と思っていた設定やらエピソードが、ことごとく外されていて、ややがっかり。もちろん、長大な原作をそのまま2時間弱の映画にするのが無理なのは分かっている。脚本の粗筋自体は、かなり巧くまとめたよな、と感心もするのだが、最後に犯人が残す手がかりは、ちょっと安易過ぎ。この犯人は、ああいうヒントは残さんって。
ということで、作品自体は、駄目駄目。あ、ヒロインの手の美しさには、ちょっとドキドキしたな。

しかし、問題のラストシーン。そう、ここで、Peter GabrielがKate Bushとデュエットした"Don't Give Up"が流れる、と聞いて、このDVDを買ったんである。
いやぁ、シーン自体は、いかにもわざとらしいラストシーンなのだが、この曲のイントロが流れた時点で、涙が出てくるっす。良い曲だわ、やっぱり。このエンディングのためだけに観る価値があるっていうか、異常にイントロが長い"Don't Give Up"のヴィデオ・クリップとして観ると良いかも。



これで、シンガポール内の公共交通機関はほとんど制覇したことになります。残っているのは、本格的鉄道とフェリーだけかな。どちらも、一度乗ると、次に降りるのは外国になっちゃう(マレー鉄道は、シンガポール内にはシンガポール駅しか無い。次の駅はマレーシア。フェリーだとインドネシア行き)ので、パスポートを持って乗る必要があります。さすがに、ちょっと敷居が高いっす。