近くのビルに東急不動産のオフィスがある。日本人駐在員などにコンドミニアムの仲介を行っているのだろう。近くに日本食屋があり、たまに前を通りかかるのだが、今日は何だか雰囲気が随分変わっていた。
今までは、コンドミニアムの写真や物件紹介のチラシが貼ってあったウィンドウに、なにやら小物類がディスプレイされていて、雑貨屋の趣である。よく見ると、あの東急ハンズのロゴが貼ってある。東急ハンズと言えば、シンガポールに進出してもらいたい日本企業リストの最上位に位置する店だ(まったくの個人的なリストであるが)。嬉しくなってきょろきょろ覗いていたら、店番のおばちゃんが出てきた。
どうやら、ハンズが東急不動産の関連会社ということで、商品を置かせてもらっているらしい。不動産屋といっても、地元の人が飛び込みで入ってくるような性格の店じゃないのだから、オフィススペースの有効活用ということだろう。
しかし、置いてあるモノが、しょぼい。いわゆるファンシー雑貨系やへんてこりんなモノばかり。私が欲しい東急ハンズの売場は、こういうのじゃないんだよなぁ。しょせん、不動産屋の片隅の小スペースだから、贅沢を言ってもしょうがないのだが、これでハンズのロゴとか貼られると、その中途半端さに、よけいストレスが溜まってしまう。
そう言えば、こちらに来てアパートを探しているとき、総務のおばちゃんが郊外ばかり連れていくので、日本人同僚が心配して
「日本人は、Orchardの近くとかの方が住みやすいんじゃないか」
と言ってくれたことがあった。それでもおばちゃんは、家賃が高いOrchard付近の物件は一つも紹介してくれず、郊外のショッピングモールを案内しながら
「どうだ、キモト。ここが、Littele Orchardだ。これで十分だろう。」
と自分の基準を押しつけてくれたのであった。何事も本物が一番良いよなぁと、東急不動産の中で一番目立つところにディスプレイされている「流しそうめん器」を見て、ため息をつくのだった。