IN/OUT (2021.4.18)

5月の大型連休も近づいてきました。今のところ、既に立ててある予定を変えるつもりは無いのですが、本当に大丈夫か、だんだん心配になってくる今日この頃です。


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「ライゾマティクス_マルティプレックス」&「マーク・マンダース─マーク・マンダースの不在」@東京都現代美術館21.4.17

東京都現代美術館2006年の設立以降、「メディアアート」の分野で活動する株式会社ライゾマティクス。Björk、Squarepusher、Perfume、ELEVENPLAY、野村萬斎など、様々なアーティストとコラボレーションしている。社内に、アーティストだけでなく、プログラマーやハード/ソフトの研究者も含む、プロフェッショナル集団だ。私は、この展覧会まで知らなかったのだが、Perfume界隈で「ライゾマ」は超有名らしい。そんな彼らの、美術館における初の大規模個展を観に、東京都現代美術館に行ってきた。

会場に入り、まず、目に飛び込んでくるのが、彼らのこれまでの仕事を映像化した「Rhizomatiks Chronicle」。そして、次の部屋では「Rhizomatiks × ELEVENPLAY “multiplex”」と題された映像が投影されている。ELEVENPLAY(MIKIKO先生率いるダンス・カンパニー)のビデオ・クリップだ。これだけだと、単に良く出来たデジタル処理されたダンス・パフォーマンス動画である。しかし、隣の展示室に行き、複数台の立方体のロボティクスが動いているのを観て、これは、先ほどの動画でELEVENPLAYと一緒に映っていた物だぞ? ということで、改めて二つの部屋を行き来きする。そして、その仕掛けに気がついて驚愕。ELEVENPLAYと立方体のロボティクスが登場している動画は、現実の空間で動いているロボティクスと、モーション・データ化されたダンサーの動きを、リアルタイムで合成しているのだ。私の文章力では伝えきれないのだが、とにかく、実物を観れば、実に衝撃的だ。一体、裏でどのような複雑なデータ処理をしているのか見当もつかないが、アイディアとそれと実現するテクノロジーが高レベルで融合していることに、大興奮である。

大規模なインスタレーションでは、もう一つ「particles 2021」と名付けられた物も展示され、それも凄いのだが、さらに興味深いのが「Rhizomatiks Archive & Behind the scene」として並んでいる記録映像や実物のデバイスだ。ドローンや、Perfumeの衣装に取り付けられていたデバイス、さらにはプリント基板まで。美術展というより、技術系企業の見本市のような雰囲気だが、これらが、Perfumeのライヴなどを支えていると思うと、その動作原理を理解しきれなくてもワクワクするし、派手なアウトプットの裏で努力を積み重ねている彼らのプロ集団として仕事ぶりに感心する。

ということで、最先端のデジタル技術をカッコ良く見せることの凄さにシビれる展覧会だった。

東京都現代美術館で同時開催されているのが「マーク・マンダース─マーク・マンダースの不在」。オランダの彫刻家 Mark Mandersの個展である。私の好みとは違うタイプの作品群だが、とにかく強烈な存在感だ。会場内には不穏な空気が立ちこめていて、その異様な迫力に圧倒される。合う人・合わない人が極端に分かれる作風だと思うが、ライゾマ展とは全く違うテイストで、どちらか片方だけ観るのは勿体無いと思う。


「戦場のメリークリスマス」21.4.18

1983年の大島渚監督作品の4K修復版リバイバル上映を観てきた。教授のあの名曲を、立川シネマシティが誇る極上音響上映で体感しようという算段である。

映画自体は何度も観ているが、40年近く経った今でも、この映画に込められた、国家と個人、西洋文化と日本文化、教養人と一般人といった対立の構図が全く古びていないことに、改めて驚く。当時から、日本も世界も、環境は大きく変わったようで、本質的なところは大して進歩していないということか。リアルタイムでは、サブカル的に大盛り上がりだった作品だが、今、余分な情報が消費され尽くした後の状態で観ると、よりメッセージが明確に伝わってくるようだ。

そして、David Bowie、Tom Conti、坂本龍一、タケシというカリスマ性溢れる男優陣(というか、女性は一人も登場しない)の美しさも、時代を超えている。特にDavid Bowieに対しては、真っ赤な花を食べさせるとか、首だけ出して生き埋めにするとか、大島渚、やりたい放題だ。坂本龍一も、演技は度外視したヴィジュアル重視の起用だと考えれば、納得。タケシの存在感は言うまでも無く、今の大御所然とした姿よりも遙かに好感が持てる。

音楽・音響は言うまでもなく素晴らしく、ここ一番で流れる「Merry Christmas, Mr. Lawrence」に感情を揺さぶられる。特にラストシーンは、映画史に残る名シーンだ。

コロナ禍で、ハリウッドのブロックバスター系映画の公開がことごとく延期になり、新作で上映されるのは、邦画や単館系小品ばかりという状況が続いている。映画館としては、マイナーな新作よりも、確実に集客が見込める過去の名作上映の方が数字が読めるということなのだろう。この手の企画が増えているのは、これはこれで、有り難くもある。



東京都現代美術館は、入館時間指定の予約券だけで無く、当日券も有るのですが、このご時世、当然、殆どの人が予約していると思いきや、当日券売り場に待ち時間40分の大行列が出来ていて驚きました。流石に、この状況は拙いんじゃないのかな。