フランスのサスペンス映画を観てきた。邦題は「すべて彼女のために」
その邦題と、「殺人の濡れ衣を着せられた妻を信じ続ける夫」という内容に関する予備知識から、ロマンチック寄りのストーリーかと思っていたら、想像していたものとは全く違うタイプの作品だった。
妻を信じ続ける夫が取る行動が、冤罪を晴らすために事件の真相を探る事ではない。もっと、直接的な行動に出ようとして、平凡な教師だった彼は、すべてを投げ出し、暗黒面に落ちることも厭わない。観客の予想を裏切り続ける展開は、ほろ苦いエンディングへ。
後半、極めて優秀な働きを見せるフランス警察が、何故、妻の無実を見抜けなかったのか、という根本的な疑問と、主役のVincent Lindonが、いささか暑苦しい演技という気がしたのはともかく、ひねりの効いた面白い映画だった。ハリウッドでリメイクされるそうだが、この作品に漂っている奇妙な毒気のようなものは無くしてもらいたくないものだ。
妻役を演じていたのは、Diane Kruger。"Inglourious Basterds"での演技が印象的だったが、この作品では、やや存在感が薄かったのが残念。