IN/OUT (2002.7.7)

シンガポールの日本人社会を震撼させたのが、大丸撤退のニュース。来年春を目処に、島内の三店舗を全て閉店するとのこと。

特に、Liang Court店は、地下のスーパーマーケットが、品揃えと夜中の12時まで開いていることで、非常に人気が高いのです。夜は単身赴任者がお総菜を買いに集まり、週末は駐在員家族が大集合。近くのコンドミニアムには、大丸があるから、という理由で選んだ日本人が多数住んでいるはず。そごうが撤退した時以上のインパクトを与えそうです。


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「虚無への供物」 (02.7.1)

日本探偵小説における三大奇書の一つと称されたり、筆者、中井英夫氏自ら「アンチ・ミステリ」と定義したり。随分前から、評判だけは聞いて気になっていたのだが、難解そうだという先入観から腰が引けること20年以上。ようやく、手に取ってみた。

読後感は、予想とは全く異なっていた。文章自体は難解では無いし、全体の体裁は、古典的な本格推理小説だ。ただし、その推理の内容は、破天荒。S. S. Van Dineあたりのパズル的小説に対する強烈な皮肉、文明批評、衒学趣味、スラップスティック風の味付け、と様々な要素が、これでもかと押し込まれている。推理小説としては、一応の解決が示されているが、その気になれば、いくらでも深読みできそうな物語だ。作者は、過剰なまでに不純物を詰めこんで、推理小説の枠組みを内側から破裂させることを目的としたように思える。"純粋な"ミステリ・マニアには、駄作だと一蹴されそうな小説でもあり、「アンチ・ミステリ」とは言い得て妙かも。

昔読んだ書評の絶賛ぶりは、ちょっと過大評価し過ぎだったな、と感じたし、奇書ぶりでは「ドグラ・マグラ」には遠く及ばないと思うものの、結構、はまってしまった。



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"Minority Report" (02.7.6)

Philip K. Dick原作、Steven Spielberg監督、Tom Cruise主演のSF映画を観てきた。

原作は、謎解きのオチがある話だが、そのまま映画化すると、種明かしの部分を分かり易く絵で見せるのが難しそうだ。それ以前に、Pre-Cog(予知能力者)の描写をそのまま映像化するのは、Politically Correct的にやばそうだし、悪役としての軍部の描き方が、今のハリウッドでは認められないように思う。そういう訳で、設定だけ拝借して、ストーリーは全く別物になっている。しかし、これが、改悪と言わざるを得ない、へなちょこさ。原作自体、やや書き込みが足りず、物語的には食い足りないところもあるのだが、敵と味方がめまぐるしく入れ替わり、最後に巴投げを食らわされるような魅力が、映画のストーリーには全く不足している。余分な要素ばかり付け加えて、原作のミソと思える部分を切り捨ててしまっているのだ。同じDick原作の映画でも、監督の妄想の強さが魅力になってしまった"Blade Runner"や、あまりに突き抜け過ぎて、笑って許してしまうしかない"Total Recall"に比べると、著しく見劣りする。

そこここに、小ネタというか、くすりと笑わせようという狙いのカットが入るのだが、大半が面白くないのも辛い。眼球ネタなんて、グロいだけだし。Spielbergは、作劇術に長けているのは認めるが、笑いのセンスとか、音楽の使い方とか、絵作り、という面では、いまいち、私には合わないようだ。最後の取った付けたようなヒューマニスト的フォローも嫌らしい。

ただし、虹彩による個人認証の徹底をはじめとする未来社会の描写は、非常にリアリティがある。自動車や携帯電話、警察の装備など、夢想じゃなく、現実の延長線で実現しそうなガジェットが沢山登場して、楽しい。トヨタやNokiaをはじめ、多数の協賛企業が、知恵を出し合った結果かもしれない。大スクリーンでのPC操作における、あのユーザーインターフェースは、割に早く実現しそうでもある。疲れそうだが…



MRTの駅から遠いため、私自身は、あまり大丸を利用していません。今回の撤退劇に対しては、やや傍観者的立場ではあります。週末の買い出しは、もっぱら伊勢丹スーパーマーケット。ここには是非とも頑張っていただきたいと念じる今日この頃です。